- 2023/06/15 掲載
アングル:中国の国債利回りが低下、内外金利差で人民元安
先月は節目の1ドル=7元を超えて元安が進み、その後も下落に歯止めが掛からない。国内外で需要が低迷する中、新型コロナウイルスのパンデミックを経た中国の景気回復が息切れしたからだ。
中国人民銀行(中央銀行)が13日に7日物リバースレポ金利を引き下げる予想外の政策を発表すると、中国と米国の10年物国債の利回り差は昨年11月以来の水準に拡大し、人民元は対ドルで6カ月ぶりの安値に沈んだ。中国と英国の10年物国債の利回り差は16年ぶりの水準に広がった。
中国は10年以上にわたり高成長が続き、国債利回りが西側諸国よりも高かった。しかし中国の利回りが米国を下回るようになり、状況は様変わりした。
パンデミック収束後に中国の回復が実現しなかったことで、多くの人々が不意打ちを食らった。足元の人民元急落も相まって、投資銀行は人民元の予想を切り下げており、アナリストは企業が手元にドルをため込むことによる将来的なリスクを指摘している。
JPモルガンのアナリストチームはノートで、人民元は構造的なネガティブキャリー(調達コストが運用収益を上回っている状態)によって圧迫され続けると予想。人民銀が元安を容認していることも、元に低下余地を与えていると指摘した。JPモルガンは最近、年末時点の人民元相場の見通しを1ドル=6.85元から7.25元に引き下げた。
人民元は年初来で4%近く下げており、アジアで最も下げ幅の大きい通貨の1つ。14日の水準は1ドル=7.1674元。
一部の投資銀行は人民元が年末に7.3元台まで下げると予想している。これは中国が国境を封鎖し、厳しいコロナ規制を強いて経済活動が阻害されていた昨年11月の水準だ。
<リスク要因>
欧米諸国がインフレの抑え込みに手間取り、金融引き締め策を続ける一方、中国はパンデミック前の経済成長率の回復に苦戦すると予想されている。
米連邦準備理事会(FRB)が14日に予想通り金利を据え置いたにもかかわらず、トレーダーは米国の高金利が長期化すると覚悟しており、一方で中国が金利を低く抑える、あるいはさらに低く押し下げる可能性は高まっている。
消息筋によると、中国当局は国有銀行に対してドル預金金利を引き下げるよう指導しており、輸出企業に対して増え続けるドルを人民元に替えるよう働きかけている。
JPモルガンの試算によると、中国企業は過去1年間に242億ドルの「過剰」なドル貯金を積み上げており、5月末の中国国内の外貨預金残高は8518億ドルに達している。
この一部でも人民元に交換されれば人民元相場の支えになるはずで、フォワード市場が織り込む人民元の水準は銀行の予想ほど弱気ではない。
OCBC銀行の中国経済圏調査ヘッド、トミー・シー氏によると、「ドル預金金利の低下はカウンターシクリカル(変動抑制的)な対策として機能し、ドル買いのために人民元を借りる動きを抑制する」という。
しかしトレーダーやアナリストによると、企業が当局の意図した通りに動く可能性は低く、海外のオフショア口座に資本が流出する可能性さえある。
ドルの翌日物金利の指標であるSOFR(担保付翌日物調達金利)は14日に5.05%と、中国の大手銀行のドル預金金利の上限より75bp高く、ドルは海外で保有した方が高い利息を稼げることになる。
ソシエテ・ジェネラルの首席アジア・マクロストラテジスト、キヨン・ソン氏は、「企業はドル資金をオフショア口座に預けることにますます魅力を感じているかもしれない」と話す。「資本流出は今年後半に人民元をさらに下落させる明確なリスク要因」であり、ドル預金金利の低下はそうしたリスクを表しているという。
(Winni Zhou記者、Tom Westbrook記者、Brenda Goh記者)
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