- 2023/06/15 掲載
アングル:日本株は「解散風」で高値圏の攻防、政治不安定化に警戒も
<16日解散説が浮上>
15日の市場では、日経平均が後場に前日比200円を超す一段高となり、バブル後高値を更新した。きっかけとなったのが、野党が内閣不信任案をあすにも提出するとの正午前の一部報道だ。
市場では「岸田文雄首相は、それを大義として解散するのではないか」(国内証券のアナリスト)というのがもっぱらの見方だ。広島サミット後に解散ムードが高まりつつあったものの、その「大義」が見当たらないとの批判も多かった。不信任案が提出されるなら解散の現実味が増すとみられている。
「選挙は買い」という経験則は、株式市場ではよく知られている。2000年以降の解散は8回あり、日経平均は全勝、TOPIXは7回株高。解散前日終値から投開票日直前の終値までの平均上昇率は、それぞれ5.2%、4.1%となっている。
とりわけ海外勢は選挙を好感する傾向が強いとみられている。海外勢が主導した6月の株高局面では「選挙は買い」を先取りする形で織り込みも進んできた。
「実際に解散となれば、まだ上値余地がありそうだ」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)との見方が聞かれる。材料出尽くしで売りという事例はこのところ見られないとして「自民党が勝利し政権安泰となれば素直に株高だろう」(マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト)という。
<勝ち方も重要>
もっとも、「日本株に重要なのは、政治の安定が揺るがないかだろう」(別の国内証券のストラテジスト)との指摘もある。2003年の衆院選では年初来高値をつける場面もあったが、野党・民主党が勢いを増す中で海外勢は買いを手控え、米株安などが重しになってTOPIXは唯一の「黒星」を付けた。
足元では、マイナンバーカードを巡るトラブルや岸田首相が総理秘書官の更迭を決めた長男の問題などを受けて、国内メディアの世論調査で内閣支持率は低下が目立つ。野党を含めた議席の変動にも注意が必要だ。日本維新の会が議席数を伸ばせば、自民党の対抗軸となる可能性がある。
目先は自民党勝利への期待で株高継続も見込まれるが、勝ち方も重要になる。議席を大きく減らすようなら岸田政権の退陣もあり得るとみられており「政治が不安定化するようなら、これまで積み上げられた海外勢のポジションが巻き戻されかねない」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役)との見方もある。
15日の日経平均は、後場の高値から381円下落し、前日比16円安で引けた。金融不安で株価が低迷した3月半ばからの3カ月で約6500円(終値ベース、約24%)の上昇と、急ピッチで水準を上げてきただけに、政治を巡る材料にしばらく神経質な展開が続きそうだ。
◎衆院選期間中の株価騰落率(%)
解散日 投開票日 日経平均 TOPIX 4週後
2000/06/02 2000/06/25 1.61 1.01 -2.45
2003/10/10 2003/11/09 0.93 -1.17 -5.49
2005/08/08 2005/09/11 7.87 8.76 6.81
2009/07/21 2009/08/30 12.12 10.36 -4.98
2012/11/16 2012/12/16 10.28 8.61 11.72
2014/11/21 2014/12/14 0.41 0.14 -1.63
2017/09/28 2017/10/22 5.87 3.98 3.75
2021/10/14 2021/10/31 2.67 1.39 -2.11
過去8回の平均 5.22 4.14 0.70
*リフィニティブのデータに基づきロイター作成。解散前日終値から投開票日直前の終値までの騰落率。「4週後」は、日経平均の投開票日直前の終値から4週間後終値までの騰落率。
(平田紀之 編集:伊賀大記)
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