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  • アングル:物価減速、想定より穏やかか 政策修正促す期待インフレ率

  • 2023/08/25 掲載

アングル:物価減速、想定より穏やかか 政策修正促す期待インフレ率

ロイター

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和田崇彦

[東京 25日 ロイター] - 8月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の伸び率が2%台まで低下した。今後も伸び率は縮小傾向とみられるが、減速スピードは想定より緩やかで、期待インフレ率が下がらなければ将来の日銀の政策変更を促す、との見方が浮上している。円安、原油高に加え、企業の価格設定行動の変化は日銀も物価上振れリスクと捉えており、来年の早い時期の政策変更を見込む市場関係者も出てきている。

<コアCPI、年度内は2%下回らない可能性も>

8月の都区部コアCPIは前年同月比2.8%上昇で、伸び率は前月の3.0%を下回り、昨年9月以来の2%台となった。電気代や都市ガス代の値下げが主因で、エコノミストの間では8月の全国コアCPI伸び率も2%台となりそうだとの声が目立っている。全国コアCPIの伸び率が2%台になれば1年ぶりだ。

昨年の上昇加速の反動に加え、電気・ガス価格の激変緩和対策やガソリン補助金といった政府の物価高対策の延長を織り込み、先行きのコアCPIは伸び率の縮小が続くとの見方が多い。ただ、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは、円安の進展や原油価格上昇などで「今まで予測していたよりCPIの鈍化ペースは鈍いものになりそうだ」と話す。

春闘の強い結果が判明して以降も、毎月勤労統計で見る賃金の上昇率はあまり加速していないが、酒井氏は、最低賃金の引き上げが10月から反映されることや、人事院勧告の地方公務員などへの適用もあり「賃金・人件費は一段と加速してくる可能性がある」と指摘する。賃金が上昇し、それが価格に転嫁されるようになれば、サービスを中心に持続的な物価上昇圧力として働く可能性があるという。

輸入物価下落の影響がラグを伴って財価格に波及することで、CPI全体としては伸びが鈍化していくものの、サービス価格が2%台で持続的に上昇するようになればCPIの伸び率縮小はペースが遅くなり、「年度内は2%を下回らない可能性が高い」とみる。

8月の都区部CPIでは、財価格が4.0%上昇で前月より伸び率が縮小する一方、サービス価格は2.0%上昇で、消費税率引き上げの影響を除けば94年3月以来の伸び率となった。

<企業の値上げ姿勢、強い状況続く>

値上げに積極的な企業の姿勢も続いている。日銀は7月の展望リポートで、企業の値上げを巡る動きを新たにリスク要因に追加。競合他社との競争が激しくて値上げしづらかった品目にも値上げが広がりだしたことを挙げ「今後、企業の価格設定スタンスがさらに前傾化し、価格転嫁が一段と長引いたり強まったりすることがないか、引き続き注視していく必要がある」とした。

日銀は総務省発表のCPIをもとに、品目別の分布で最も頻度の多い上昇率である「最頻値」などのコア指標を算出・公表しているが、7月分では3つのコア指標がそろって2001年1月以降の最高を更新した。上昇品目比率と下落品目比率の差も77.2%で最高となった。

岡三証券・債券シニアストラテジストの長谷川直也氏は、日銀が企業の賃金・価格設定行動を物価の上振れリスクと認識し始めたことから、この上昇品目と下落品目の割合の差の「重要度が高い」とみている。この値が最高を更新したことは「価格設定行動に変化の兆しがみられている」との日銀の見方に沿った動きだと指摘。単月の数値のため、日銀は「変化の兆し」から大きく評価を変えないとみられるものの、「日銀の物価見通しを改善させうる内容だった」とする。

<下がりにくいインフレ期待、政策修正促すか>

日銀は7月の決定会合で10年金利の連続指し値オペの水準を1%に引き上げ、0.5%を超える金利上昇を容認した。決定の一因には予想インフレの判断引き上げがあり、植田和男総裁は将来的な物価上振れリスクへの備えだと説明した。

日銀では、輸入物価が大きく下げているにもかかわらず、期待インフレ率が連動して下げてこないことに現状の期待インフレ率の強さを感じる向きがある。今後、コアCPIの伸び率鈍化が緩やかにしか進まないとなれば、人々のインフレ期待は下がりにくく「日銀の政策変更を促す可能性がある」(みずほリサーチの酒井氏)との見方も出ている。

酒井氏は、物価や期待インフレ率の動向、企業収益に加え、来年の春闘でも高い賃上げが期待できそうだと判断すれば、日銀は早ければ来年1月に物価見通しを引き上げた上で政策修正に踏み切る可能性があると予想している。

(和田崇彦 グラフィックス作成:田中志保 編集:石田仁志)

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