- 2023/09/20 掲載
米軟着陸シナリオ、UAWストや政府閉鎖でも崩れず=イエレン氏
[ニューヨーク 19日 ロイター] - イエレン米財務長官はロイターに対し、米経済の「ソフトランディング(軟着陸)」シナリオは、全米自動車労組(UAW)のストライキや政府機関閉鎖の危機、学生ローンの支払い再開、中国経済の問題波及など短期的なリスクがあっても崩れないとの見方を示した。
18日に実施されたロイターの編集者、記者、コラムニストとの討論で、好調な労働市場と健全な個人消費を維持しつつ、インフレ抑制に向けた実質的な進展を経済が保っていることを示す証拠があると指摘。「米経済で見られるのは労働市場の健全な形での冷え込みであり、大量解雇を伴うものではない」とした。
米経済がリセッション(景気後退)入りするとの予測が薄れるに連れ、エコノミストの間でここ数週間、ソフトランディング見通しに対する支持が高まっているが、米3大自動車メーカー(ビッグ3)に対するUAWのストライキのような逆風にさらされる可能性があると言及。バイデン政権はストライキの早期解決を双方に働きかけているとした。
さらに、米国における電気自動車(EV)の力強い未来を確保するために、米英府が税制優遇を含むリソースを投入しているため、バイデン大統領にとって「自動車産業で創出される雇用が良好な雇用であること」が重要とした。
<不必要なリスク>
米下院の共和党強硬派が6月に合意した水準を上回る支出削減を要求しているため、政府機関閉鎖のリスクがここ2週間弱で高まっているが、イエレン長官は「経済や政府の正常な機能にとって不必要なリスク」とし、上院では6月に合意された2024会計年度の裁量的支出の上限15億9000万ドルを順守に超党派の支持があるとした。
一方で、このようなリスクによって米経済が現在の緩やかだが持続可能な成長軌道から外れることはないと見込んだ。
米国債市場については、金利の上昇や多少のボラティリティーにもかかわらず「かなりうまく機能している」と評価。「流動性が若干逼迫した時期もあったが、基調的な市場のボラティリティーを考慮すると、予想と現実の乖離は何もない」とした。
さらに10月1日からの学生ローンの返済再開により支出の一部が減少するだろうが、バイデン大統領による所得に応じた返済政策の強化は多くの債務者に安心感をもたらすとした。
<中国の「デリスキング(リスク低減)」>
イエレン長官は、中国経済はパンデミック(世界的大流行)からの回復の遅れ、住宅価格の下落、高債務、生産性の低下に苦しんでおり、これらは中国政府当局者にとって課題となっているが、中国にはそれらに対処する政策余地があると指摘。米国は中国経済からの「デカップリング(切り離し)」を求めているわけではないと改めて主張し、「議論の余地のない」分野での貿易・投資の継続は歓迎するが、バイデン政権は中国への「必要以上の過度な依存」を持つサプライチェーン(供給網)の「デリスキング(リスク低減)」に取り組むと述べた。
また、技術や対外投資に関する米国の制限は、中国の近代化を損なうためではなく、米国の国家安全保障を守るためであることを中国側に明確に伝えていると語った。
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