- 2023/12/27 掲載
焦点:2024年の緩和に先走る市場、インフレ鈍化で主要中銀への期待高まる
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 2024年を目前に控え、欧米の投資家、エコノミスト、ビジネスリーダー、そして消費者は共通の期待を抱いている。それは利下げの開始だ。
ほとんどの主要先進国の中央銀行は今月、22年以降の積極的な利上げを事実上封印する金融政策決定会合を開催し、今年を締めくくった。唯一の例外である日本銀行はマイナス金利政策の解除を見送った。
主要中銀が利上げを見送ったのは23年にインフレが好転したためだ。米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中銀)、カナダ中銀、日銀が共有する目標値2%の平均3.7倍のインフレ率でスタートした後、物価上昇ペースは目標値の1.5倍まで低下した。
もちろん、これはインフレとの闘いにおける「ラスト1マイル」をこなすため、やるべきことがまだあることを意味する。中銀は早過ぎる勝利宣言を嫌い、最大限の選択肢を維持するため、前のめりな金融市場をけん制。高水準の金利を長期維持する、必要ならば追加利上げするとの意向を示している。
しかし、利下げを開始するためにインフレ率が2%まで低下する必要はない。
<重要な理由>
インフレ率がさらに鈍化する中、金利を安定的に維持することも政策引き締めの一形態であり、長く維持するのは適切ではないかもしれない。
これは一部のFRB当局者が利下げ理由として挙げ始めていることであり、特に米国経済の「ソフトランディング(軟着陸)」を望むならなおさらだ。
必要以上に制約的な金利を続けることは、経済活動の急速な鈍化、大幅な失業増、景気後退といった厳しい結果を招くリスクがある。
住宅や製造業など、金利の影響を受けやすいセクターは1年以上にわたって金利上昇の影響を感じてきた。
サービス業は総じて拡大を続けているが、S&Pグローバルの先進国製造業活動指標は最悪期を過ぎたことが示唆されているものの、22年10月以降縮小を示し続けている。
<市場とのずれ>
市場は中銀の見込みよりもはるかに積極的な緩和を期待しており、大規模なチキンゲームが進行中だ。
例えば、先週のFRB当局者の予測では24年中に75ベーシスポイントの利下げを見込んでいたが、債券・金利先物市場は現時点でその2倍の利下げを予想。そのため、シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は市場の動きに「混乱している」と語っている。
一方の欧州。関係筋によると、ECBが6月までに利下げに踏み切る可能性は低い。これは市場が現在織り込んでいる時期より3カ月遅い。
もちろん重要なのはインフレ動向だ。政策立案者はこれまで、インフレを目標水準に戻すために必要であればある程度の経済的痛みは覚悟していると述べている。
特に米国と英国の選挙を含め、来年は政治の影響もあり得る。政治的な独立性を重んじる中銀は、選挙結果を左右しようとしていると非難されないよう、選挙間近に大きな行動を起こすことを望まない可能性がある。
年末を控えて利下げ観測を複雑化させかねない新たな事象が出現した。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が船舶への攻撃を続けているため紅海での航行が回避されており、サプライチェーン(供給網)の目詰まりがインフレの好転を妨げる可能性がある。
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