- 2025/03/07 掲載
〔国際女性デー50年〕男女賃金格差3割、解消進むか=女性登用、職場環境整備がカギに
日本企業では、男性と女性の賃金に2~3割程度の格差がある。賃金ギャップはジェンダー不平等の一つだとの認識は広がりつつあるが、是正が進まない企業は依然多い。女性の正社員登用や管理職育成、働きやすい職場環境の整備など、格差解消に向けた課題は山積している。
38カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の2022年の男女賃金格差は21.3%と加盟国平均(約11%)の2倍。韓国、ラトビアに次いで3番目に大きい。
一方、22年の女性活躍推進法改正で男女賃金格差の公表が義務づけられた日本の企業(301人以上を雇用)のうち、厚生労働省が24年1月時点で把握できた1万4577社の賃金格差は平均30.5%。女性管理職比率の低さや勤続年数の短さが要因だ。JPモルガン証券の調べでは、格差が最も大きい金融・保険で45.7%、卸売り・小売りで39.1%の差がある。
格差解消に向け、動き始めた企業もある。メルカリは役割・等級では説明できない男女の賃金格差の改善に着手し、23年7月に7%だった格差は24年6月に2.3%まで縮まった。中途入社社員の給与を前職の水準を参考に決めていたことが格差の原因と分かり、個別に報酬を調整したという。
「日本の男女賃金格差をぶち破る」と訴えるのは、女性向けITエンジニア育成講座を運営する「ミズエンジニア」(東京)の山崎ひとみ最高経営責任者。卒業生の需要は高く、平均オファー年収は484万円。「日本女性は基礎学力が高い。卒業生はキャリアアップにより、別人のように生き生きする」と語る。
賃金差が1割程度ある花王は、元女性役員と管理職候補の女性社員が経験談などを共有する場を21年から開催。延べ78人が参加し、「前向きになれた」といった感想が寄せられた。女性の昇進意欲が高まって管理職が増えれば、賃金格差の是正にもつながる。
少子高齢化で人手不足が深刻化する中、働き手を増やすには女性の労働条件を改善し、就労を促すことが不可欠だ。JPモルガンの西原里江チーフ株式ストラテジストは「経営者が男女賃金格差に向き合うことは人手不足の対応策にもなる」と強調する。西原氏によると、足元の格差縮小ペースでは欧米並みの水準に追い付くのに15年はかかる見込みという。
大和総研の中澪研究員は「企業は格差を生み出す背景や要因を分析し、不平等が生じないよう中長期的に取り組む必要がある」と話している。
【編集後記】時事通信では従業員(非正規含む)の女性比率は30.1%、男女間で28.3%の賃金格差がある。正規に限ると、20代で2.6%の差は40代で16.6%と最も大きくなる。残業時間が長い繁忙職場に男性の配置が多いことや、役職手当が付く管理職の女性比率が2.3%と極めて少ないことが主因だ。
個社の賃金格差は、厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」や企業の有価証券報告書で確認できる。女性取締役の多くが実は社外出身であるなど女性の役員・管理職比率は実態と異なる場合がある。可視化された賃金の数字を見てみよう。(時事通信経済部記者・角田彩乃)。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答えるミズエンジニアの山崎ひとみ最高経営責任者=2月18日、東京都千代田区 〔写真説明〕 〔写真説明〕花王が開いた元女性役員と女性管理職候補者との座談会(同社提供)
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