- 2025/06/06 掲載
アングル:ECBの利下げ停止観測強まる、ラガルド氏の「良好な立場」発言で
発言に反応し、ユーロは対ドルで6週間ぶりの高値を付け、金利の変動に敏感なユーロ圏の短期国債利回りは上昇。短期金融市場が織り込むECBの7月利下げの確率は発言直前の30%程度から20%程度に下がった。
トレーダーらは米関税を巡る不透明感を踏まえ、なお年内1回の追加利下げを予想している。しかしアナリストによると、大局的に見れば2008─09年の世界金融危機以降で最も積極的に進められてきたECBの緩和サイクルが終わりに近づいている。
アビバ・インベスターズのシニアエコノミスト、バシレイオス・ギオナキス氏は「市場を動かしたのは、ECBは不確実性に対処する上で良い立ち位置にあるというフレーズだった。関税その他の外的要因による重大なショックがない限り、ECBの利下げは終わった可能性が高い」と述べた。
コメルツ銀行の為替ストラテジスト、ミヒャエル・フィスター氏はこの日のユーロ高について「ECBが、この日の利下げ決定をもって利下げサイクルが終わりに近づいているという、予想外にタカ派的なメッセージを発したことが要因だ」と指摘。フィデリティ・インターナショナルのマルチアセットポートフォリオマネージャー、ベッキー・チン氏は、米国から欧州へ投資資金が還流するとの見方からユーロに強気の見通しを示した。
<転換点>
市場では当初、ECBがインフレ見通しを引き下げたことが材料視されたが、その後はすぐにラガルド氏の発言が注目の的になった。
ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネージャー、ギャレス・ヒル氏は「今回の発言は利下げ停止が基本シナリオであることを示す内容だった。今日の会合の目的は、突発的な事態に備えて金利を現水準付近にとどめることに対する地ならしだ」と述べた。
ユーロ圏のインフレ率は目先、ECBの目標を一時的に下回る可能性もあるが、ドイツの政府支出増加や貿易障壁の拡大によって今後は上昇圧力が再び高まるかもしれない。
フィデリティのチン氏は「前回の予測から成長率とインフレ率は下方修正されたが、貿易交渉を巡る不確実性を踏まえれば、ECBがデータ次第とのスタンスを取るのは妥当な判断だ」と評価。「次回会合については様子見、またはいったん停止」と予想した。
ECBの決定を受けて、欧州の株価指数は下げ幅を縮小した。銀行株が上昇して他のセクターを上回る値動きを見せたことは、投資家が利下げ終了を織り込み始めたことの表れだ。
<最大の課題は米関税政策>
アナリストはECBの見通しにとって最大の課題は依然、米国の関税政策だと見ている。
ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメントのヒル氏は「トランプ米大統領の就任からわずか3─4カ月で世界は大きく変わり、ひっくり返った。今後数カ月間に何が起きるのかを確実に予測するのは非常に困難だ」と語った。
ECBは今年と来年の成長率予想を下方修正したが、アビバ・インベスターズのギオナキス氏は、ユーロ圏経済が年初の予想よりも堅調に推移していると指摘。特に企業活動の動向を示す総合購買担当者景気指数(PMI)が、景気の拡大・縮小の分かれ目である50の水準近辺を維持している点に注目しており、「私の見解では、ECBは金利を2%に据え置くべきだ」と述べた。
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