- 2025/06/07 掲載
ECB当局者、インフレ見通しで二分 過度な低下に警戒感も
[フランクフルト 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の政策担当者らは6日、インフレ急上昇に対する勝利を宣言した。ただ一部では、インフレ率が低下し過ぎるリスクに警鐘を鳴らす向きもある。
ECBは5日、市場予想通り政策金利を0.25%引き下げ、預金金利を2.00%とした。インフレ率がようやく目標の2%に戻ったことを受け、1年にわたる金融緩和サイクルを一時停止する可能性を示唆した。
一時停止の根拠は、経済成長が懸念されていたよりも良好だという点にある。しかし、多くのエコノミストが、この力強い成長率は異常だと指摘する。関税発動前の米国向け前倒し輸出によるところが大きいうえ、特にアイルランドでは、税制上の理由で同国に拠点を置く大手外国企業の活動が活発だったことから、データに歪みが生じている。
物価上昇率が低すぎるリスクについて長らく警告してきたセンテノ・ポルトガル中銀総裁は、インフレ率が2%を大きく下回ることに警戒すべきだと指摘。6日の記者会見で、「(ユーロ圏の)インフレ率は現在2%を下回っている。低下トレンドが深刻化し来年初めには1%という危険な水準に近づくか、それをわずかに上回るだろう」と述べた。
インフレがさらに低下する可能性がある理由の一つは、欧州連合(EU)最大の経済大国であるドイツ経済が今年も停滞し、ゼロ成長またはマイナス成長が3年目を迎えることにある。
オックスフォード・エコノミクスは「特に貿易摩擦が激化し、需要に重しがかかった場合、持続的な下振れに対する懸念がすぐに再浮上する可能性がある」と指摘した。
一方、オッリ・レーン・フィンランド中銀総裁は、米国との貿易戦争の激化による特別なリスクがあり、見通しは非常に複雑であるため、ECBのシナリオでは全ての結果を考慮することはできないと述べた。「例えば、サプライチェーンの深刻な混乱や金融市場の混乱は分析から除外されている」とブログに投稿した。
他方、インフレ率は目標である2%に達するというECBの見解に沿った、より穏健な見方をする当局者もいる。
ミュラー・エストニア中銀総裁は「ECBの2%のインフレ目標は実質的に達成された」と表明。「今後数年間の経済成長もかなり緩やかなものになると予想されており、経済環境の過熱化に伴う物価上昇圧力について過度に懸念する必要はない」とした。
カザークス・ラトビア中銀総裁も、見通しには満足しているとした上で、政策余地を確保し新たなデータを待つため、ECBは利下げを一時停止すべきだと主張した。
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