• 2025/06/16 掲載

米FRB、金利は据え置きか 関税問題や中東情勢不透明で

ロイター

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[ワシントン 13日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は17、18の両日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の引き下げを見送り、誘導目標を従来の4.25―4.50%に据え置く見通しだ。

投資家が注目するのは、政策金利見通しなどを一覧にした「ドットチャート」。更新は3月会合以来となる。足元ではインフレや雇用の勢いが和らいでいることを示す経済指標の発表が相次いでおり、ドットチャートからFOMCメンバーがこうしたデータの動きをどの程度重視しているかが読み取れるだろう。着地点が見えない貿易や予算問題、中東で激化する武力衝突に対しFOMCメンバーがどれほどのリスクを見出しているかもうかがい知ることができそうだ。

最近発表のインフレ指標は、トランプ大統領の高関税政策が直ちにインフレ加速をもたらすとの懸念を和らげるものだった。5月の雇用統計では雇用の伸び鈍化が示された。こうした状況を踏まえ、全ての条件が変わらなければFRBは利下げ再開方向に近づきそうだ。

トランプ氏は政策金利の水準を1.00%ポイント引き下げるよう要求したばかり。ただ、FRBが要求を受け入れることは、トランプ政権の各種政策の実施や著しい金融緩和状態にもかかわらず、インフレ率が目標の2%に鈍化し、その水準にとどまると大胆にも見通したというのに等しい。

そうした政策判断や決定は、主要産油国のイランをイスラエルが攻撃したことで一気にリスクが高くなった。原油現物(スポット)価格が9%近く上昇したためだ。過去4カ月間はエネルギー価格が下落傾向にあり、インフレ率が予想よりも鈍化する一因となっていたが、状況は一変した。

1970年代の2度にわたる石油危機時に比べると、原油価格が米インフレに与える影響は小さくなった。ただ、商品価格の大幅な変動や地政学的リスクの高まりを受け、FRBは政策決定の際に一段と慎重になる可能性がある。

最近の例では、ロシアが2022年2月にウクライナ侵略を開始した際、FRBは政策金利の引き上げ幅を0.25%ポイントにとどめ、開戦前の段階で予想されていたよりも変更を幅にとどめた。

トランプ氏が進める世界貿易ルールの再構築も、インフレ誘発のリスクを内包しているが、現在も協議は継続しており先行きは見えない。上院での大型減税法案の修正審議も決着には程遠い状況だ。

3月公表のドットチャートでは年内の利下げ見通しは0.25%ポイントずつ計2回が見込まれていた。ただ、パウエル議長は記者会見で、先行きがあまりにも不透明な局面では「とりあえず現状維持で様子を見よう」という慣性が働きやすいと述べていた。こうした慎重な姿勢は関税問題が解決するまで続く可能性がある。

EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏はFOMCを控えたリポートで「最近のFRB高官発言から政策判断で様子見姿勢が強くなったことが読み取れる。景気の先行き不透明感が広がる中、政策調整の緊急性を示す兆候はほとんどない」と記した。

今回更新のドットチャートについてダコ氏は、政策金利の予想中央値は年内2回の利下げの想定が変わらず、その上で家計や企業に重くのしかかる不確実性を踏まえ、全体として「辛抱強く待つこと」と「乏しいフォワードガイダンス(政策の先行き見通し)」が特徴になると予想している。

この見方は、政策金利に連動する先物商品に投資する市場参加者の予想とも概ね一致している。ただ、5月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)の上昇率がともに市場予想を下回ったことを受け、9―13日の週では年内利上げ回数が3回になるとの予想が強まった。

FRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数のデフレーターは前年比伸び率がFRB目標を0.5パーセントポイント程度上回っているが、変動の大きい食料とエネルギーを除いたコアPCEは過去3カ月間、2%付近で推移している。一方、失業率は過去3カ月間、4.2%で横ばいが続いている。

<方向性が明確に>

FRBが政策金利の誘導目標を現行水準に引き下げたのは昨年12月。当時はインフレ率の鈍化に伴う借入コストの持続的な低下が見込まれていた。

しかし、今年1月20日にトランプ氏が政権に返り咲いた後に打ち出した高関税政策により、インフレ加速と成長鈍化のリスクが高まった。このためFRBは政策を判断をする上でインフレ率を2%の目標水準に維持することに重点を置くか、経済を支えて低失業率を保つかという難しい立場に立たされた。

ただ、こうした二者択一の政策判断という最悪のリスクは後退した。トランプ氏が4月2日に「相互関税」を発表した直後には金融市場の反発を招き、米景気後退観測が広がったが、その後上乗せ関税率の適用に猶予期間を設けて当初方針から部分的に退いたためだ。

米金融大手ゴールドマン・サックスの最新の分析によると、米景気後退入りの確率は30%程度に低下し、インフレもやや鈍化、成長率は若干上振れする見込み。ただ、今夏にインフレ率の上昇幅は再び拡大し、FRBは12月まで金利を据え置くと予想している。

SGHマクロ・アドバイザーズの米チーフエコノミスト、ティム・デュイ氏は、年内の利下げ回数は0.25%ポイントの1度限りになる可能性があると指摘する。前回ドットチャート発表時は年末までに9カ月あったが、今回は6カ月に減ったからという単純な理由からで、決着を見ていない重要課題が山積していることも要因という。

物価や失業率を巡って別の見通しもある。消費者が輸入品に払う代金が以前よりも高くなって、サービス消費を減らしていることから需要が弱まっており、その結果、関税がインフレに与える影響が小さいとの見方だ。こうした動きは既に始まった可能性がある。

FOMC前に発表予定の5月の小売売上高からは、そうした観点について手がかりが読み取れるかもしれない。

しかし、シティグループのエコノミストらは、需要の減退がインフレを抑制して失業率の上昇を招き、FRBは市場の大方の予想よりも速いペースの利下げ局面に踏み込むとみている。具体的には 9月に利下げを再開し、その後は2026年にかけて毎回のFOMCで利下げを継続していくと予想している。

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