- 2025/06/25 掲載
物価目標の実現前倒しの可能性、果断に動くべき場面あり得る=田村日銀委員
[25日 ロイター] - 日銀の田村直樹審議委員は25日、福島県金融経済懇談会であいさつし、物価の上振れリスクに警戒感を示した上で、物価目標の実現時期が想定より「前倒しとなる可能性も十分にある」との認識を示した。その上で、物価目標実現の確度が高まる、あるいは物価上振れリスクが高まる場合は「たとえ不確実性が高い状況にあっても、果断に対応すべき場面もあり得る」と語った。
日銀は5月の展望リポートで、基調的な物価上昇率が2%目標に到達する時期について、2027年度までの見通し期間の「後半」とした。
田村委員は、政策委員の中で最もタカ派と位置付けられる。あいさつでは、米国の関税政策は日本の経済・物価を下押しする公算が大きいものの「それでも27年度まで、前年比2%近傍の物価上昇が続く」と予想。企業の賃金・価格設定行動が「賃金・物価が上がりにくかった以前の状況に戻っていくリスクは小さい」と指摘した。「これまで高まってきた消費者物価の基調的な上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さい」とも話した。
田村委員は金融政策運営について、経済・ 物価情勢の改善に応じて「早すぎず遅すぎず、適時適切に政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」のが基本的な考え方だと説明。政策金利は過去30年間、0.5%を超えていないが「0.5%に壁があるとは感じていない」と述べた。その理由として、前回政策金利が0.5%だった07年、08年当時に比べ、物価上昇率は大幅に高く、市中銀行の貸出金利が低いことを挙げた。
<食品価格の高騰、「家計の予想インフレに大きな影響」>
田村委員は、物価に強気な見方を示した。消費者物価指数の4月、5月のデータは「想定よりも上振れてきている」と述べた。人件費の転嫁が進んでいるかをみる上で重要なサービス価格についても、家賃や公共サービスを除いたベースでは近年2%を超える伸びが続いていると指摘した。
生鮮食品やその他食料の価格上昇は、その背景に人手不足による供給力低下などがあるため一過性とは言えず「家計の予想インフレ率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因となり得る」と述べた。企業や家計の予想物価上昇率は「すでに2%程度に達している」とし、予想物価上昇率が「さらに上振れしていってしまわないか注意が必要だ」と語った。
田村委員は経済・物価見通しについて「仮置きとも言える状況」だとし、今後の推移次第では上下双方向に大きな修正がありうると述べた。5月の展望リポートでは経済・物価見通しを引き下げたが、景気の「減速」という範ちゅうで持ちこたえられるというのがベースシナリオだとした。米国の関税政策等の直接的な影響を受けるのが輸出型の製造業やそのサプライチェーン関係企業等に限られるということが大きな理由だと述べた。
田村委員は6月16、17日の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額計画に反対票を投じ、26年4月以降も四半期4000億円ずつの減額を継続すべきだと主張した。この点について「長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な範囲でできるだけ早く日本銀行の国債保有残高の水準を正常化していくべきだと考えた」と説明した。
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