- 2025/06/30 掲載
焦点:上半期M&Aは件数減も成約額が増加、超大型案件に道
トランプ米大統領が「解放の日」と称して貿易相手国に「相互関税」を課すと今年4月2日に発表したことは市場に冷や水を浴びせ、いくつかのM&A案件や新規株式公開(IPO)は延期された。
ディールロジックの速報値によると、1月1日―6月27日のM&A成約件数は1万7528件と、前年同期の2万0583件から減った。ただ、規模が大きい案件が多かったため、全体の成約額は約2兆1400億ドルと前年同期より26%増え、100億ドルを超える案件は62%増加した。
増加分の多くはアジアからもたらされ、アジアのM&Aは5839億ドルと2倍超に膨らんだ。北米では1兆0400億ドルと17%増だった。
株式資本市場(ECM)収入で9位となったUBSのグローバル株式資本市場共同責任者、トミー・ルーガー氏は「25年上半期には多くの(M&A)が実施されると予想されていたが、現実にはそうではなかった」と説明した。
ディールロジックのまとめで1月1日―6月27日の投資銀行業務収入が3位、M&A件数が5位だった米バンク・オブ・アメリカのグローバルM&A共同責任者のイバン・ファーマン氏は「保留になって今後再開される案件は多くある」とし、「25年下半期については楽観的だ」と語った。
投資銀行手数料収入で4位、M&A案件で3位となったモルガン・スタンレーのグローバルM&A共同責任者、ジョン・コリンズ氏は「おそらく500億ドルを超えるような超大型取引の可能性は1年前と比べて高まっている」と説明。
ジェフリーズ銀行のフィリップ・ロス副会長は「勢いが続いていることは明らかで、大規模案件への道が開かれている。人々は1カ月前よりも前向きになっており、決断を実行に移し始めている」と指摘した。
また、市場が落ち着きを取り戻してきたのに伴って機関投資家は株式投資に戻り始め、25年第2・四半期に延期されたIPO計画を進める企業も増えている。UBSのルーガー氏は「これらすべてが相まって最近の3―4週間は信じられないほど強力なIPO環境が整い、動きが大きく活発化している」と語った。
ドイツ銀行の欧州・中東・アフリカ株式資本市場担当の責任者、サーディ・ソウダバー氏は「株式市場は関税や地政学に関連する多くのボラティリティーをはねのけるのに驚くべき能力を示した」との見方を示した。
日本と中国を中心とするアジアでの25年上半期のM&A契約総額は5839億ドルと、前年同期の2699億ドルから大きく膨らんだ。世界でのM&Aに占める割合は27.3%となり、前年同期から11%ポイント超上昇した。
トヨタ自動車は6月3日に豊田自動織機を330億ドル規模の株式公開買い付け(TOB)で完全子会社化し、非公開化する計画を発表。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)が率いるコンソーシアム(企業連合)は6月16日、オーストラリア石油2位のサントスを全額現金の187億ドルで買収することを提案した。
投資銀行手数料で2位、M&A手数料収入で首位となった米ゴールドマン・サックスのグローバル投資銀行部門担当副会長、ラガブ・マリア氏は「アジア企業がアジア企業を買収する動きが活発化するだろう」とし、「日本は(アジアでの)全体の契約件数で大きなけん引役となっており、この傾向は今後も続くと確信している」と話した。
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