- 2025/07/04 掲載
アングル:堅調な米雇用統計で遠のく利下げ、FRB様子見姿勢を正当化
折しもアトランタ地区連銀のボスティック総裁はドイツにおける会合で「一番強調したいのは、米国の貿易やその他の分野の政策変更に経済全体と物価が適応する過程は短期ではなく、単なる一時的な物価変動でも済まない点だ。私が正しければ、米経済はより長い間物価高止まりを経験する公算が大きい」と語り、FRBとしては金融緩和に踏み出す前に物価や経済成長、雇用の動向が「より明確になるのを待つべき」だと訴えた。
6月雇用統計の非農業部門雇用は前月比14万7000人増と予想を上回る伸びで、失業率は上昇予想に反して低下。米経済が関税を巡る混乱や不確実性にさらされながらも、底堅さを維持している様子が改めて示唆された。
トランプ氏は繰り返しFRBに利下げを要求しているが、FRBはインフレリスクがある以上、労働市場が著しく悪化しない限り利下げは必要ないとのメッセージを発してきた。
パウエル議長は、関税に起因する物価上昇があるとすれば夏場にそれが始まりそうだとも発言している。
こうした中で今回の雇用統計は、早ければ今月29─30日の連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBが利下げを決めるとの見方に冷や水を浴びせる形になった。そのような観測が浮上したのは、ウォラー理事とボウマン金融監督担当副議長が相次いで、労働市場悪化を防ぐために早期利下げをすべきだと述べていたからだ。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏は、6月の非農業部門雇用の予想以上の増加と失業率低下、失業保険申請の減少によって早期利下げの根拠は完全に消し飛び、FRBの緊急支援が全くいらない状況だと分かったと説明。「われわれは次の利下げは今年の終盤だと見込んでいる」と付け加えた。
直近のFOMCメンバーの政策金利予想分布(ドット・チャート)に基づくと、年内の利下げ回数は2回との見通しが大勢だが、ボスティック氏は年内1回の利下げしか想定していない。
一方、パウエル議長の後任候補の1人に挙げられているベセント財務長官はCNBCで雇用統計が良好だったと評価しつつ、今のところ関税に由来するインフレは目にしていないと主張した。
その上でFRBが今利下げしたくないならそれでも構わないが、結局9月に50ベーシスポイント(bp)の大幅利下げを迫られる可能性が大きくなるだけだとの見方を示した。
今回の雇用統計には、労働市場の減速をうかがわせる要素もある。平均時給の伸びは3.7%と、FRBが2%の物価上昇率目標と整合的とみなす領域に一段と近づきつつある。
またトランプ政権の貿易やその他の政策が労働市場の変容をもたらしている証拠も多く、製造業雇用は7000人減少したほか、政府部門雇用もマイナスとなった。
移民制限と不法移民の強制送還を進める取り組みを通じて、労働力人口における外国人の比率が下がっている様子も見て取れる。
6月の労働参加率は0.1ポイント低下の62.3%。5月も0.2ポイント下がっている。
ネーションワイドのキャシー・ボスジャンシック氏は、このような労働参加率の落ち込みがなければ失業率は4.7%に高まっていたと分析。労働市場から退出する動きの背景には、職探し意欲が失われた可能性や移民の減少があるとみている。
ボスジャンシック氏は今回の雇用統計をむしろ「弱い」と受け止め、関税に伴う一時的な物価上昇がありそうだとしても、FRBは年内に75bpの利下げに動き、減速する経済を支えるという同社の見方を裏付けていると記した。
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