- 2025/07/31 掲載
再送日銀、金融政策の維持決定 食品高騰で25年度物価見通し引き上げ
(本文中の誤字を修正しました。)
Takahiko Wada Kentaro Sugiyama Takaya Yamaguchi
[東京 31日 ロイター] - 日銀は30―31日の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%で維持することを全員一致で決めた。日米関税交渉が合意に至るなど「前向きな動き」が見られるものの、各国間の交渉や関税に伴う経済や物価への影響を巡る不確実性は「高い状況が続いている」とした。改訂した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、コメなど食料品価格の上振れを反映して2025年度の物価見通しを大幅に引き上げた。
<不確実性の高さ、「極めて」の文言が落ちる>
展望リポートでは、現在の実質金利が「極めて低い水準にある」とした上で、経済・物価見通しが実現していくとすれば「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」として、利上げを継続していく方針を維持した。
その上で、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る「不確実性が高い状況が続いている」とし、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要だとした。ただ、通商交渉の展開や関税がもたらす影響を巡る不確実性については、これまでの「極めて高い状況」との表現から「極めて」を削除した。
<物価見通し、26年度は2%下回る>
25年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の政策委員見通しの中央値は前年度比プラス2.7%、生鮮食品・エネルギーを除くCPI(コアコアCPI)はプラス2.8%と、いずれも前回の見通しから大幅に引き上げた。26年度もそれぞれプラス1.8%、プラス1.9%に引き上げたが、引き上げ幅は0.1%ポイントずつで引き続き2%を下回っている。
利上げ判断の上で重要となる基調的な物価上昇率について、成長ペースの鈍化で伸び悩むものの、その後は人手不足感の強まりや中長期的な予想物価上昇率の上昇で「徐々に高まっていく」とし、「見通し期間後半には物価目標とおおむね整合的な水準で推移する」との表現を維持した。
物価見通しを巡るリスクバランスは「おおむね上下にバランスしている」とした。前回は25年度・26年度ともに「下振れリスクの方が大きい」となっていた。
<個人消費の判断が後退>
実質国内総生産(GDP)は、25年度を前回のプラス0.5%からプラス0.6%に引き上げた。26年度はプラス0.7%、27年度はプラス1.0%で維持した。
経済の現状については「一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復している」との判断を維持した。
ただ、個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さが見られるものの、雇用・所得環境の改善を背景に「底堅く推移している」とし、前回の「緩やかな増加基調を維持している」との表現から後退した。先行きについては、物価上昇の影響で当面は横ばい圏内となるものの、「雇用者所得の増加が続くもとで、次第に緩やかな増加基調に復していく」とした。
経済の見通しについて「25年度と26年度は下振れリスクの方が大きい」と指摘した。
<見通しの前提、今回も記述>
日銀は、リスク要因はさまざまあるものの、特に各国の通商政策などの今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は「高い状況が続いている」とし、金融・為替市場や日本経済・物価への影響については十分注視する必要があると指摘した。
前回に続き、見通し作成の前提が説明された。今回の中心的な見通しは、これまでの各国間の交渉状況を踏まえているほか、今後、グローバルサプライチェーンが大きく毀損(きそん)される状況は回避されることなどを前提にしたとしている。今後の各国の政策の帰すうやそれを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価見通しが大きく変化しうる点に注意が必要だとも指摘した。
7月1日に審議委員に就任した増一行氏は今回が初めての決定会合となった。
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