- 2025/09/26 掲載
焦点:チャットGPTに運用頼る投資家、加速する「ロボアド」市場 リスクに警戒も
[ロンドン 25日 ロイター] - 対話型人工知能(AI)「チャットGPT」の公開から間もなく3年を迎える中、少なくとも10人に1人の個人投資家が株式投資の銘柄選びにチャットボットを利用するようになり、AIが資産運用の方針を提案する「ロボアドバイザー(ロボアド)」市場ブームが加速している。ただ、ロボアドを巡っては熱心な支持者ですら、リスクが高く、まだ従来型アドバイザーに取って代わることはできないと見ている。
AIのおかげで誰もが銘柄を選び、値動きを追い、かつては大手銀行や機関投資家だけが手にしていた投資分析を使えるようになった。
データ分析会社リサーチ・アンド・マーケッツによると、ロボアド市場の規模は昨年の617億5000万ドル(約9兆2460億円)から、2029年には約600%増の4709億1000万ドルに拡大する見通しだ。ロボアド市場にはフィンテックや銀行、資産運用会社など、自動化されたアルゴリズム駆動型金融アドバイスを提供する全企業が含まれる。
<ペイウォールに隠れたデータも>
スイスの金融大手UBSで約20年間にわたり企業分析を手掛けたジェレミー・ルン氏は昨年末の退職以来、自身のマルチアセット・ポートフォリオの銘柄選びにチャットGPTを使っている。
「ブルームバーグ(端末)のような、非常に高額な市場データサービスはもう使えない。チャットGPTのシンプルなツールでも多くのことができるし、私がかつて行っていた作業の多くを再現できる」と話す一方、こうしたツールではペイウォール(課金の壁)の背後にあるデータにはアクセスできず、重要な分析を見落とす可能性があると注意を促した。
ロボアド市場は今、急拡大している。
証券会社イートロが世界各地の小口投資家1万1000人を対象に行った調査によると、全体の約半数がポートフォリオの銘柄選定や入れ替えにチャットGPTやジェミニのようなAIツールを活用したいと考えており、13%はすでにこうしたツールを使っているという。
調査会社ファインダーによると、英国では個人の金融アドバイザーとしてチャットボットやAIを使っているとの回答が40%に達した。
チャットGPT側は、利用者が専門的な金融アドバイスをチャットGPTに頼るべきではないと警告している。運営元のオープンAIは投資選択のためにチャットGPTを利用しているユーザー数を公表していない。
イートロの英マネージングディレクター、ダン・モチュルスキ氏は「AIモデルは素晴らしいものになり得る」と評価しつつ、「人々がチャットGPTやジェミニのような生成AIを水晶玉のように扱えばリスクが生じる」と指摘した。
最適なのは市場分析に特化するように訓練された生成AIプラットフォームを利用することであり、「汎用AIモデルは数値や日付を誤ったり、既成のストーリーに頼りすぎたり、過去の価格変動に過度に依存して将来を予測したりしようとする」危険性があると話す。
<「信頼できる情報源のみ使用せよ」>
ファインダーは23年3月、チャットGPTに対し、負債水準、持続的成長性、競合他社に対する優位性を生み出す資産などの基準を用いて、優良株からバスケットを選ぶよう指示した。
チャットGPTが選んだ半導体大手エヌビディアやインターネット通販大手アマゾン、日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル、小売り大手ウォルマートなど38銘柄は、これまでに約55%値上がりし、バンガードやフィデリティ、HSBC、ファンドスミスなど大手が手掛ける、英国で最も人気の高い投資信託10本の平均上昇率を19パーセントポイントほど上回っている。
確かに米国株は史上最高値付近で推移しており、今のところ米国の不安定な政策や振れの大きい経済データにも市場は動じないように見える。しかしチャットGPTを使った銘柄選びには一定の金融知識が欠かせず、利用者は「正解にたどり着く前に間違えるリスクが高い」と認めている。
ルン氏は「あなたが空売りのアナリストだと仮定して、この銘柄に対する空売りの根拠を示せ」とか、「米証券取引委員会(SEC)への提出書類など信頼できる情報源のみを使用せよ」とチャットGPTに指示している。「与える文脈が多いほど回答の質が向上する」という。
ロボアドには大きなリスクが伴う。AIブームにより誰もが投資にアクセスできるようになった一方、市場が反転した際の損失を適切に軽減するために個人投資家がリスク管理ツールを用いているかは分からない。
欧州STOXX600種指数は年初来で10%近く上昇しており、昨年23%急騰したS&P総合500種指数は今年も13%上昇している。
ルン氏は「もし人々がAI投資に慣れ、利益を出しているなら、危機や景気後退時に対応できない恐れがある」と危惧を示した。
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