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- 2025/09/19 掲載
【ガートナー警告】生成AIで「部門間の境界」が消え…衝突多発する“組織の歪み”とは
ライター。2010年、IT製品・サービスに関する情報提供を目的とするWebサイトにて医療チャンネルの立ち上げに参画し、担当記者として医療分野のIT推進の動向を取材して記事を制作。2011年、日本医療情報学会認定の医療情報技師資格を取得後、病院・診療所向け合わせて30社以上の電子カルテベンダーを取材した実績がある。医療関連システムの製品情報や導入事例、医療IT政策・市場動向に関する取材を行ってきた。
AIが引き起こす“衝突”の正体とは?
まず、ガートナーのバイス プレジデント,アナリストであるカーリー・イドイン氏は「生成AIとクラウドの急速な普及により、これまで明確に分かれていたはずの領域、つまり、データやアナリティクス、ソフトウェア・エンジニアリングの間で“衝突”が生まれています」と説明。イドイン氏は“融合”ではなく、あえて“衝突”と呼ぶべき混沌(こんとん)であると表現する。
バイス プレジデント,アナリスト
カーリー・イドイン氏
「クラウドや生成AIの登場によって、かつて別々の場所で扱われていたプロセスが共通のプラットフォーム上で交差し始めました。これが新たな摩擦を生み、同時に強いエネルギーも生んでいるのです」(イドイン氏)
たとえば、アナリティクスとソフトウェア開発はかつて別の専門領域とされていた。しかし現在、開発者がBI(ビジネス・インテリジェンス)や予測モデルを活用したり、逆にアナリティクスの専門家がアプリケーションに直接手を加えたりするようになっているという。
イドイン氏は、こうした境界が曖昧になっている点は、同社が公表するマジック・クアドラント上でも、複数カテゴリにまたがって同じ製品群が評価されていることからも読み取れると指摘する。たとえば、データ分析プラットフォーム「Microsoft Fabric」ではBIと開発が統合され、AIによる自動処理がビジネスプロセスを横断して組み込まれ始めている。
イドイン氏は、その証拠としてさまざまなメディアの報道記事を引用しつつ、ハーバード・ビジネス・レビューが「いまや誰もがプログラマー」というタイトルの記事を付けたように、アナリストや業務担当者がデータ活用を通じてアプリ開発に関与し始めた現実があると説明した。
そして、イドイン氏は「AIが引き起こす“衝突”は無視も先送りもできない重要な変化であり、そのエネルギーを生かしてデータやアナリティクスを進化させるべき」と語る。その上で「衝突とは何か」「なぜ問題なのか」「どう価値に変えるか」という3つの論点を軸に、ソフトウェア開発との融合を含めた実践的なアプローチを提示した。
広がるデータ活用・進む協働が引き起こす「役割の重複」
また、アナリティクスの可能性を飛躍的に広げるものとして、ドイン氏が注目しているのが「エージェント型アナリティクス(Agentic Analytics)」だ。これは、従来の分析基盤とは異なり、利用者がリテラシーや専門知識を問わずにプロセス全体のデータにアクセスでき、ビジネスプロセスの意思決定と行動の間をシームレスに結びつける仕組みである。さらにイドイン氏は、このような変化を支えている要因として「データ/アナリティクスの職務は、アジャイルなデリバリーのために、ソフトウェア・エンジニアと協働するケースが増えています」と説明する。
実際、ガートナーの調査によれば、チーム間のコラボレーションについて「実際に協業している」と回答した割合は90%に達しており、横断的なプロダクトチームの方が、より多くの価値を生み出していることが確認されている。
一方で「データ統合の責任は誰にあるのか」という問いには、データエンジニア、サイエンティスト、開発者のいずれもが「自分たちだ」と回答しており、領域の重複が進む中で責任の所在が不明瞭になってきている。 【次ページ】衝突がもたらす結果を検討すべき理由
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