• 2025/10/30 掲載

焦点:中国のEV産業、市場競争で一段と強く 政府支援打ち切り

ロイター

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[上海/北京 29日 ロイター] - 中国は電気自動車(EV)産業への政府助成を打ち切る姿勢を鮮明に打ち出している。

今月の中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)で基本方針が決まった「第15次五カ年計画(2026-30年)」で、EVは過去10年余りで初めて戦略的な新興産業のリストから除外された。

これは中国指導部がEVについて、成熟産業になり、もはや従来と同じ規模の資金支援を必要とせず、発展を市場の力に委ねられると考えている証拠だと、アナリストらはみている。

EVは、習近平国家主席さえ苦言を呈する中国に広がる過当競争の象徴とみなされている。ただ、アナリストらは、戦略的新興産業のリストから外れたからといって、EVに対する政府の好意が失われたわけではないと指摘する。

むしろ、中国が世界的な貿易摩擦や安全保障上の緊張を踏まえて「自立自強」のために他の技術分野に資源を投入する戦略的な決断の表れだという。

<市場の役割拡大>

ユーラシア・グループの中国ディレクター、ダン・ワン氏は「EVはもう政策を優先的に割り当てる必要がないとの公式認定だ。EV向け助成措置は消えていくだろう」と語る。

ワン氏は「中国は既にEV関連技術と電池を支配しているので、政策で優遇すべき理由はない。政府が生産設備の削減を要求しているわけではないが、今後は誰が生き残るかを決める上で市場の役割がより大きくなる」と話す。

EVとプラグインハイブリッド車、燃料電池車が該当する「新エネルギー車(NEV)」は過去3回の五カ年計画で戦略的新興産業に分類され、各メーカーのEV生産促進や消費者の需要喚起に向けて数十億ドル規模の補助金が投入されてきた。

それによって中国は現在、EVのサプライチェーン(供給網)を掌握するとともに、BYD(比亜迪)という世界をリードするメーカーも誕生。中国のNEV市場は世界最大で、昨年7月の時点で国内自動車販売の50%余りをNEVが占めた。成長ペースは政策担当者が当初設定した目標に10年早く到達したほどだ。

しかし急成長と政府助成により、中国では各メーカーが総需要を超える車を生産してしまった。実需に基づくよりも、政府の政策に影響される生産目標の達成に向かっていったからだと、ロイターはこれまでに報じている。

ジェイトー・ダイナミクスの分析では、中国で事業展開している自動車メーカー169社のうち、市場シェア0.1%未満の企業は93社に上る。

中国の対外経済貿易大学WTO研究院のトュー・シンカン教授は「国家的見地に立つと(NEVに)過剰な関心を払う必要はなくなっている。さもないと過剰生産設備を助長しかねない」と言う。

同教授は、NEVが五カ年計画の戦略的新興産業から外れたとはいえ、関係省庁は今後、将来の業界の道筋を定めるためにより個別的な計画を発表すると予想している。

<強みの確立>

中国の政策担当者は確かに、何年も前から最終的な目的はEV産業の自立だと表明し、それと並行して大規模な補助金や税制優遇措置を徐々に打ち切ってきた。

2022年末には全国規模のEV購入補助金が終了しており、購入者への税還付金制度も段階的に縮小して27年に終わらせる方針だ。

ある中国の政策アドバイザーは、EVが戦略的新興産業に分類されなくなっても、重要性は変らないと強調。輸出だけを見ても自動車セクター全体の収益源になっているし、産業チェーンの強化や中国の国際的な指導力を高めることにも役立っているとの見方を示した。

とはいえ政府の方針転換を受け、EV業界は市場での競争を通じて自らの未来が決まる現実に向き合わなければならない。今年前半、中国の上場自動車メーカー17社のうち、黒字は11社だった。

中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹事務局長は、今回の五カ年計画からは、政策担当者がEV業界の支援をやめるために従来の全般的アプローチではなく、より的を絞った施策を打ち出そうとの意向がうかがえると説明。EVメーカーには、より技術革新的な製品の生産を重視し、低品質車の生産抑制を図るよう圧力がかかるだろうとみている。

カウンターポイントのアナリスト、シャオチェン・ワン氏は、各メーカーは中国市場で地歩を得る上で、十分に傑出した中核的な強みを構築する必要が出てくると指摘する。

「例えばBYDやリープモーター(零?汽車)といったブランドはサプライチェーンを統合する能力の強化を通じてコスト面の優位性を高め、より費用対効果の大きい製品を投入してきた。一方、小米科技(シャオミ)や、華為技術(ファーウェイ)主導で設立された技術連携組織HIMAに参加している各社は、そのブランド力と情報技術面の優位性で消費者を引きつけている」という。

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