- 2025/11/21 掲載
FRB当局者、金融市場の安定性に注視 金利の行方見極める中
[20日 ロイター] - 連邦準備理事会(FRB)当局者が今後の利下げの行方を見極めようとする中、金融市場の安定性を巡る懸念が新たな議論のテーマとして浮上している。
FRBのクック理事は20日、ジョージタウン大学での講演で、経済見通しやFRBの金融政策には触れなかったものの、金融システムに対するさまざまなリスクを指摘。「金融システム全体のリジリエンス(強じん性)を踏まえると、金融危機時に見られたような脆弱性は見当たらず、資産価格の下落で金融システムにリスクをもたらされるとは考えていない」と指摘。株式のほか、社債や住宅などの価格が歴史的な高水準にあることで、将来的に大幅なバリュエーションの調整が起きる可能性があるとした一方、調整が起きても金融システム全体が悪化する事態には至らないとの見方を示した。
これに先立ち別のイベントで講演した米クリーブランド地区連銀のハマック総裁は、9月の米雇用統計で雇用者数が予想以上に増加したことが示された中、高止まりするインフレ率を抑えるために金融政策を適切な状態にする必要があるとの考えを改めて示唆。「インフレは依然として高すぎ、間違った方向に向かっている」とし、追加利下げを支持しない姿勢を示した。
また、株価上昇と「緩和的な」信用状況により金融環境は「現在、かなり緩和的」であると指摘し、こうした状況でさらに利下げすることは「リスクの高い融資を支援する可能性がある」と説明。利下げは雇用市場への「保険」という位置づけになるかもしれないが、「そうした保険は金融安定リスクの高まりを犠牲にして得られる可能性があることに留意すべきだ」とも述べた。
ハマック氏はクック氏と同様、金融システムは良好な状態にあり、銀行の資本は十分で、家計も健全なバランスシートを保持していると感じていると言及。また、ヘッジファンドのレバレッジ水準の上昇を注視しており、プライベートクレジットは監視に値すると考えている点でもクック氏の考え方と軌を一(いつ)にした。
クック氏とハマック氏の発言はFRB政策担当者らが広く抱いている懸念の一部を反映しており、これは19日公表された10月28─29日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨でも示されている。
議事要旨は、「経済指標が限られる中で当局者がインフレ高進と雇用低迷のリスクを検討したと記載。人工知能(AI)関連の投資を急速に見直す動きが出た場合に『株価の無秩序な下落』につながる可能性があるとも指摘し、金融政策の妥協点を探った状況が示された」と記した。
政策担当者の議論は主に、追加利下げによりFRBの目標である2%を上回る水準で高止まりしているインフレがさらに間違った方向に進む可能性があるのか、あるいは、軟調な労働市場を支援するためにFRBの追加緩和が必要なのか、という点に集中している
こうした中、市場は雇用市場の大幅な悪化を示すデータが示されない限り、FRBは次回12月会合で利下げを見送り、来年1月に25ベーシスポイント(bp)の利下げに踏み切るとの従来の見方を維持している。
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