- 2025/11/27 掲載
米経済下振れリスク後退は利上げ再開を意味、政策調整は慎重に=野口日銀委員
Takahiko Wada
[大分市 ロイター 27日] - 日銀の野口旭審議委員は27日、大分県金融経済懇談会であいさつし、米国経済の下振れリスクの後退を理由に利上げ再開に理解を示す一方で、利上げペースは「ほふく前進」のように慎重であるべきだと述べた。
米国の高関税政策を巡り、米国経済、日本経済ともに現時点で影響は限定的なものにとどまっている。野口委員は、米国で関税分の転嫁が進むに従って経済に下振れの影響がより強まっていく可能性があるとしても「おそらくそれほど深刻なものにはならないというのが現時点で一般的な見方だ」と述べた。
その上で、こうした見方の浮上は、日銀が「経済・物価の展開が見通し通りであれば、金融緩和の度合いを徐々に調整していく」という、昨年3月以来の基本的な政策方針に立ち帰ることを意味すると話した。
野口委員は物価目標達成の実現時期について、10月の展望リポートと同じく見通し期間の後半と予想。仮に物価目標が見通し期間の後半に達成されるとすれば、政策調整も「それに向けた適切なペースで行われていくべき」と述べた。
野口委員は、政策調整は「早すぎても遅すぎても問題が生じる」と指摘。実際の政策運営では、自然利子率に関する様々な推計に基づいて、中立金利が含まれると思われる範囲に「一定の目途」を付けた上で、「経済と物価への影響を確認しつつ、時を置いて小刻みに利上げを行っていくのが最も現実的だ」と主張した。その結果、ある段階で物価安定のめどがつけば、そこが中立金利の到達点だとし、こうした手法が「ほふく前進」的な政策調整のあり方だと語った。
政策調整が早すぎる場合に生じる問題として、野口委員は「物価目標達成が大きく後ずれし、最悪の場合には達成が見通せなくなるということ」を挙げた。足元の食料品を中心とする価格上昇について「基本的にはコストプッシュ要因に基づく過渡的なものであり、事前の想定以上に長引いてはいるものの、コスト転嫁が一巡すれば収束していくはずだ」と話した。政策金利の拙速な引き上げは賃金上昇のモメンタムを失わせ、2%目標の達成を遠ざけてしまうリスクがあるとも述べた。
野口委員は政策調整を慎重に行うべき理由として、長きにわたるデフレやゼロインフレの結果としての「ゼロノルム慣性」はいまだに強く、その解消には相応の時間を要することも挙げた。
一方で、政策調整が遅すぎる場合の問題としては「経済や物価の安定が脅かされる可能性が強まる」と指摘。もしも「物価目標の完遂までは政策金利引き上げは一切行わない」ならば、目標達成時点で政策金利を一挙に下限から中立金利まで引き上げない限り、インフレが制御できないことになるとした。
また、実質金利が低すぎる状態が過度に長く続けば、その影響は「為替あるいは地価や株価といった資産価格に現れてくるはず」と警戒感を示した。野口委員は、為替や資産価格が金融政策にとって重要な波及チャネルとした上で、経済における様々なチャネルの効果が「経済と物価に最終的にどう働きつつあるのかを慎重に見極めながら、政策金利という手段を用いて金融緩和の度合いを適宜調整していくことが必要になる」と語った。
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