- 2025/12/29 掲載
マクロスコープ:高市氏が予算案で講じた「会計操作」、国債発行抑制を強く意識
[東京 29日 ロイター] - 政府が26日に閣議決定した2026年度一般会計予算案の編成過程で、高市早苗首相が新規国債発行額の抑制を強く意識していたと複数の政府関係者が明らかにした。足元の長期金利上昇や円安進行を念頭に、財政の持続可能性に対する市場の不信を招きたくないと考えたからだという。歳出が膨らむ中、高市氏は国債発行を抑えるための「会計操作」も講じた。
「財政規律にも配慮し、強い経済の実現と財政の持続可能性を両立させる予算案ができたと考えている」。閣議決定を終えた高市氏は26日、首相官邸で記者団にこう胸を張った。予算規模は122兆3092億円と過去最大に膨らんだものの、新規国債発行額は29.6兆円と今年度当初予算に続いて20兆円台を維持。公債依存度も今年度より低い24.2%にとどめた。「責任ある積極財政」を体現したとの達成感が表情に滲んだ。
複数の政府関係者によると、高市氏は予算案編成過程で新規国債の発行額をしきりに気にしていたという。関係者の1人は「高市氏の頭には市場の反応への懸念があった。国債発行額を今年度当初の28.6兆円以内に収めることが官邸と財務省の最初の目標だった」と明かす。
ただ、自動車税の環境性能割廃止や軽油引取税の暫定税率廃止など、地方の税収減を補うための歳出増は避けられそうにない。野党から協力を引き出すための政策でもあり大幅な軌道修正も難しい。最初の目標は早々に崩れ、一時は30兆円の大台も突破する見通しになったという。
そこで高市氏は財務省幹部と断続的に協議を重ね、ある「会計操作」の実施を決めた。地方公共団体への交付税を管理するために設けられた特別会計に対し、本来一般会計から繰り入れるはずの予算を7000億円減額するというものだ。その分歳出が減り、国債発行額の抑制につながる。特会の借入金残高から同額を一般会計に移すことで、計算上は増減をゼロにする帳尻合わせもした。
仮に従来通り一般会計から特会に繰り入れていれば、新規国債発行額は30.3兆円程度になっていたとみられる。
前出の政府関係者は「高市氏の希望に沿うための会計操作だった。財務省の知恵とも言えるが、今後はもう同じ手は通用しないだろう」と説明。別の関係者は「特会から借り入れているようなものだ。予算委員会で野党から追及される可能性もある」と話した。
高市氏は官邸で記者団に「年明けの国会において多くの賛同を得られるように誠心誠意説明を尽くす」とも述べた。通常国会は来年1月の召集が予定され、まずは予算案や関連法案の年度内成立に向けた審議が続く。薄氷を踏むような「新規国債発行30兆円以下」の看板を掲げ、高市氏は野党との論戦に臨むことになる。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)
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