- 2026/02/16 掲載
アングル:五輪会場の決済はビザ独占、危機感募らせる欧州
[ミラノ 15日 ロイター] - ミラノ・コルティナ冬季五輪の公式ショップで土産物を買おうとする人は誰でも、欧州の政策立案者を悩ませているある問題に直面する。それは域外のカード決済サービス業者の圧倒的な強さと、現金の存在感の低下だ。
1986年から2032年までの国際オリンピック委員会(IOC)とのスポンサー契約に基づき、大会会場でカード決済サービスを提供する唯一の業者は米カード大手ビザとなっている。「カード決済ならビザだけ受け付けます」という看板が掲げられ、スタッフはその場でプリペイドカードの発行を案内している。
しかし、欧州中央銀行(ECB)が目標の29年までにデジタルユーロを導入すれば、30年にフランスで開催される次の冬季五輪までに別の選択肢が生まれる可能性がある。
欧州連合(EU)理事会は昨年12月、デジタルユーロ構想こそが経済安全保障の鍵であり「消費者や企業がユーロ圏内でいつでもどこでも支払いに利用できるようになる」として同構想への支持を表明した。
EUの立法担当者は遠隔決済や無人サービスを除き、店舗やサービス業者に現金の受け入れを明確に義務付けるルールの作成も進めている。
<現金派は少数>
五輪組織委員会の広報担当者によると、五輪会場のショップは現金を受け付けており、現金を引き出せるようにATMが設置されている。
一方、ビザの広報担当者はミラノ・コルティナ五輪グッズの購入体験を最高のものにできるように取り組んでいると述べた。
実際、もはや財布に紙幣を入れている人は少ない。
「父が現金を引き出しに行った。看板を見てビザを持っていなかったからだ」と語ったのは、ミラノの主要な公式ショップの入り口まで続く長い行列に並んでいたイタリア人の雑誌の執筆者マルタ・ムレさんだ。
ミラノ大聖堂近くの五輪公式ショップの店員は、約6分の1の人しか現金で支払っておらず、残りの全員がビザカードを利用していると推測した。
<外国業者に対する依存>
ECBのチポローネ専務理事は12日の講演で、ビザやマスターカードのような国際的なカードブランドがユーロ圏のカード決済の3分の2を占めていると述べた。
チポローネ氏は「われわれは小売り決済の現在の依存関係に対処し、この流れを変える必要がある」と述べた。
五輪は常に商業上の取り決めとして一度限りで終わるイベントだが、これはECBにとっての痛いところを突いている。
ECBがデジタルユーロを発行するまでには、EU法が整備される必要がある。
しかしこの法案は中央銀行が支援するデジタルウォレットが民間銀行の預金を流出させたり既存の決済システムを排除したりする可能性があるとの懸念から、欧州議会で2年以上足踏み状態となっていた。
だが昨年12月にまずEU理事会が、続いて欧州議会が今月、プロジェクトを巡るECBの立場を全面的に支持するようになった。
ECBは中銀通貨の役割を守るために、デジタルユーロを現金のようにオフラインとオンラインで、そして卸売りと小売りでいずれも使えるようにしたいと考えている。
「端的に言うと、自分たちのお金の支配権を失えば、自らの経済的運命の支配権を失うのだ」と、デジタルユーロのプロジェクトを率いるチポローネ氏は語った。
民間部門の一部は新たな小売り向け決済の選択肢よりもむしろもっと限定的な制度にとどめるよう望んでいた。
<現金決済も保護>
大西洋を挟んだ米欧関係の緊張がECBの立場を後押ししており、EU理事会と欧州議会は現金を保護することを含めてECBを支持している。
ロイターの記者はミラノの五輪プレスセンター内にあるスーパー「エッセルンガ」で、店が現金を受け付けないために購入しようとした食品を棚に戻さざるを得なかったメディア関係者を目撃した。
エッセルンガの広報担当者は、サービス提供を迅速にするために五輪組織委との合意に基づいて当初カード決済だけを受け付けていたが、16日から現金決済を受け付けると発表した。
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