- 2021/04/22 掲載
東芝、問われる成長戦略=「物言う株主」攻勢激化も―英ファンド撤退後も苦難
東芝の買収を提案していた英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズが事実上の撤退を表明したことで、東芝をめぐる混乱はひとまず区切りが付いた。だが、計25%近く出資するとみられる「物言う株主」との攻防は続く見通し。むしろ今回の買収騒動を経て、より多くの利益を得ようと彼らが攻勢を強める可能性もある。6月の株主総会を控え、株主らが納得する成長戦略が問われている。
「企業価値向上のための施策の新たな見直しに着手している」。CVCから「(買収の)検討を中断する」との書簡を受領後、東芝はコメントでこう説明した。しかし、かつての総合電機メーカーから「インフラサービス企業」に変貌した東芝に、成長の柱は見いだせないのが実情だ。
東芝は経営危機時、稼ぎ頭だった半導体メモリー事業や医療機器子会社などを次々と売却。その結果、2019年度の売上高はピーク時の約半分の3兆3000億円余りにとどまった。発電所などのインフラ事業を主力に据えるが、あるファンド関係者は「インフラサービスに特化するなら高成長は難しい」と指摘する。
成長分野として打ち出した再生可能エネルギーでも、洋上風力発電などの市場は既に寡占化。データビジネスに活路を求めるが、収益貢献までには時間がかかる。
しかし、企業価値向上への具体的な姿を示すことができなければ、株価は低迷し、「物言う株主」らの納得は得られない。CVCが示した買収価格は1株5000円。これに対し、既存株主の香港投資ファンド、オアシス・マネジメントは「1株6200円超が妥当」とのコメントを発表し、東芝に期待する株価水準を引き上げた。一方で、21日の終値は4205円。綱川智社長は14日の就任会見で「ステークホルダー(利害関係者)との信頼構築に努めたい」と強調したが、現状では説得力に欠ける。
CVC以外の投資ファンドには、引き続き東芝買収を模索する動きもある。また6月の株主総会までには、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが求めた昨年の総会運営をめぐる調査結果もまとまる見通しだ。CVCによる買収提案を退けた東芝だが、今後も苦難が続く。
【時事通信社】
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