- 2025/09/10 掲載
マクロスコープ:「ポケカ」けん引の玩具業界、月100万枚の「鑑定ブーム」も
[東京 10日 ロイター] - 日本のおもちゃ業界が好調だ。少子高齢化が進み、15歳未満人口の減少傾向に歯止めがかからない中、「キダルト」と呼ばれる大人たちが業界を支える。市場規模の内訳をみると「ポケモンカード」などのトレーディングカードが4分の1以上を占める。カードブームは資産形成や売買目的の「鑑定ブーム」にもつながり、相乗効果をもたらしている格好だ。
<「ポケモンカード」の鑑定ブーム>
東京都大田区の大型倉庫街の一画に「PSA Japan」はある。もともと「PSA」は1991年に米国で設立された鑑定会社だ。2018年に日本法人を開設。トレーディングカードの真贋鑑定、保存状態の格付けを主な業務としている。
事業開発責任者の林健氏によると、カードの鑑定を求める世界中のユーザーからの注文は右肩上がりだ。1999―2021年までは日米合わせて年間100万枚ほどだった注文が、22年以降は毎月100万枚に激増し、それ以降も伸び続けているという。そのうち3割ほどが日本法人への注文だ。
鑑定を経たカードはケースに密閉されるため、純粋にコレクションとしてのカードをきれいに保存したいというニーズがある一方で、「ポケモンカード」を中心に高額なカードが増え、資産として保持したり、売買したりするユーザーが増えていることが「鑑定ブーム」の一つの背景だ。
カードの高額化に伴い偽物が出回る事例もあるため、PSAで鑑定済みであることが世界的にも真作の証明と認識され、取引価格が未鑑定のカードに比べて数倍に跳ね上がるケースもある。
林氏は「カードで遊んだ世代が親になり、子どもと一緒にカードで遊ぶ時代。カード人気とそれに伴う鑑定のニーズは今後も広がっていくだろう」と見通しを語る。
<おもちゃ市場は拡大>
こうしたブームにもけん引される形で、おもちゃ業界は市場規模を拡大してきた。日本玩具協会の統計によると、24年度の市場規模(テレビ・オンラインゲームなど除く)は1兆0992億円で、前年度比7.9%上昇した。23年度に初めて1兆円を超えてからも好調な伸びを示した形だ。
24年度の市場規模を分野別で見ると、「カードゲーム・トレーディングカード」が全体の27.5%を占めている。
総務省統計局によると、本来おもちゃのユーザーとされてきた15歳未満の人口は4月1日現在で1366万人と、44年連続で減少した。
ただ、カードに加えてキャラクターを自分で育成できる「ハイテク系トレンドトイ」なども堅調に売れている。玩具協会の担当者は、いずれもキッズとアダルトを合わせて「子どもの心を持った大人」という意味の造語「キダルト」が需要を生み出していると説明。「需要がこれまで以上に幅広い商品ジャンルにまで拡散しつつあることが見えてくる」とする。
<専門家「成長余力は残る」>
おもちゃ業界の現状を専門家はどう見るのか。野村証券投資情報部ストラテジストの松田知紗氏は「この10年間で15歳未満人口は13%程度減少したが、同じ期間に市場は37.3%増加した」と指摘。「おもちゃが大人の趣味や自己表現の手段として見られている」ことが一つの要因だと分析する。
カードブームはコロナ禍の世界的な巣ごもり需要とそれに伴うプレー人口の増加に加え、企業側が積極的に対戦イベントなどを開いていることも大きな要因だとし、「世界中で対戦イベントが開かれている。デジタルの時代だからこそ、リアルな対戦の場がコミュニティー形成の機会として重視されている」という。
業界全体を見渡してもグローバル展開の強化やイベントの充実など更なる成長余力が残されているといい、「キダルト層、インバウンド層に人気の商品はその分野を拡大している。市場規模拡大の流れは継続するだろう」と話す。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)
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