- 2021/05/13 掲載
焦点:予想以上に上昇した米CPI、FRBの方針転換を占えるか
4月のCPIはFRBに方向転換させるほどのものではないとみる投資家も少なくない。しかしながら、発表は米経済が持続的なインフレ上昇に向かっているとの懸念をかき立て、市場を動揺させた。
チェース・インベストメント・カウンシルのピーター・タズ社長は「今回の統計が示した動きが一時的なのか、持続するのかが争点だ。時間がたてば分かることだが、私は労働コストとコモディティー価格の動きがある程度落ち着くまでは、物価の上昇は続くとみている」と語る。「想定されたよりも早くFRBが緩和政策を変更する必要があるかもしれない、との考え方につながるのは明らかだ」とも述べた。
CPIは総合指数が前月比0.8%上昇と、2009年6月以来の高い伸びになった。食品・エネルギーを除いたコア指数は0.9%の上昇だった。発表を受けて米主要株価指数は約2%下落した。
オックスフォード・エコノミクスの米首席エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏によれば、米経済は「予想されたよりは好調だが、過熱ではない」。たった一つの統計でFRBが政策を変更するわけはなく、今回のCPIで流れが一気に変わることはないと話す。
投資家はインフレの状況についてもっと情報を得るため、近日中に発表される新たな経済統計に関心を向けている。とりわけ注目されているのは13日の4月の生産者物価指数(PPI)。エコノミストは前月並みの上昇を予想している。14日には4月の小売売上高と鉱工業生産のほか、企業在庫も発表される。
米国のインフレを警戒する向きは、コロナ禍からの経済回復が過熱し始めているのではと思案する。新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、多くの州は経済活動の制限措置を解除しつつある。追加のコロナ経済対策に基づく給付金は3月に対象家計に送付され、需要を押し上げる一因になっている。
ただ、経済回復の証拠が明確にあるわけではない。7日に発表された4月の雇用統計では就業者数の伸びは予想外に鈍かった。
FRBのクラリダ副議長は12日、危機対応の支援を巻き戻すことをFRBが検討するほど米経済が回復するには「まだしばらくかかる」と述べた。物価上昇の動きは一時的との見方も示した。
<問題はインフレの持続性>
4月CPIに対する米国債市場の反応が、株式市場に比べればおとなしめだったことを指摘し、債券市場のFRBウォッチャーが引き締めを見込んでいない証左だとする市場関係者もいる。
インキャピタルの首席市場ストラテジスト、パトリック・リーリー氏は「今回のような物価上昇はなお一時的だと見なされている」と話す。そうでなければ債券市場はもっと懸念するはずだが、実際はそうなっていないという。
12日の10年物米国債利回りは一時1.697%と、4月13日以来の高水準に上昇したが、その後は1.695%になった。前日比では7.1ベーシスポイントの上昇。
株式市場では最近、インフレと金利が上昇する可能性への懸念から大型成長株の一部が売られていた。この流れは12日も続き、3つの株式指数ではナスダックの落ち込みが最も大きかった。
プルデンシャル・ファイナンシャルの首席市場ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏によると、投資家の疑問は今、超低金利がどれだけ長く続くかに集まっている。同氏は1つの統計だけでFRBが姿勢を変えることはないと指摘。姿勢変更にはもっとデータが必要になるとし、特にインフレ上昇とコスト上昇が持続していることを示す統計が必要とみる。「われわれはまだその段階ではない。われわれはなお、景気回復の途上にある」と語った。
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