- 2021/05/18 掲載
アングル:トヨタ自動車が上場来高値、バリュー株物色の流れを象徴
[東京 18日 ロイター] - トヨタ自動車が約6年2カ月ぶりに上場来高値を更新した。「万年割安株」とも言われる同社株だが、好調な業績が改めて好感され、見直し買いが入っている。最近の世界的な株安局面で下げを先導したグロース株の戻りが鈍く、物色の流れがバリュー株に移行していることを象徴しているとの指摘も出ている。
トヨタが12日に発表した2022年3月期の業績見通しは、連結営業利益(国際会計基準)が前期比13.8%増の2兆5000億円と好調だった。しかし、相場全体が急落過程であったこともあって、発表直後の株価反応は弱かった。
トヨタの株価は18日の東京市場で、2015年3月24日に付けた上場来高値8783円を更新したが、予想PER(株価収益率)は依然として10倍台。市場で試算される全体のPERが14倍台である点を踏まえれば、最高値を更新してもなお割安感が強い水準となっている。
同社が今期前提としている想定の為替レートは1ドル105円。足元のドル/円は109円台で推移しており、「地合いの落ち着きとともに円安効果が注目されるようになってきており、早くも業績上方修正が期待されている」(国内証券)という。
9月30日現在の株主に対して1対5の株式分割を実施することも、今後は株価を刺激するとの指摘もあった。
直近の物色動向で人気を集めている銘柄はPER10倍以下、PBR(株価純資産倍率)1倍以下の銘柄が目立つ。例えば、このところ活況となっている鉄鋼株では日本製鉄のPERは8倍台、PBRは0.7倍台と年初来高値近辺にありながら割安と言える水準だ。
株式市場においてトヨタ株は「バリュー株を象徴する存在」(SBI証券・投資調査部長の鈴木英之氏)と言われる。市場では「決算発表が一巡したことをきっかけに、当面の物色の流れはこれまで期待感で買っていたグロース株ではなく、現実の収益が良くて割安なバリュー株の修正に完全にシフトした。かつては万年割安株とも言われていたトヨタがリード役であるのは疑いない」(岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏)との声が出ている。
ウエートの違いから、ファーストリテイリングなどと比べ日経平均に対するトヨタの寄与度は大きくない。指数的には大幅反発となっているきょうの日本株相場への影響は限定的だ。しかし、象徴的な銘柄であるため「投資家のセンチメントにポジティブな影響をもたらす」(別の国内証券)との見方も出ている。
(水野文也 編集:伊賀大記)
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