- 2021/05/22 掲載
アングル:中国の暗号資産業界に動揺なし、禁止措置の実効性弱く
中国の金融当局は18日、銀行と決済企業による暗号資産関連サービスについて、これまでより厳しい禁止措置を発表。これを嫌って暗号資産全体の時価総額は一時、1兆ドル(約108兆円)も吹き飛んだ。
だがこの措置によって暗号資産市場と中国本土のマイニング活動が大きく妨げられるとの懸念は当たらないようだ。20日の中国では、相変わらず暗号資産の購入が可能で、マイニングによる大もうけを約束する投資商品も引き続き販売されていた。
暗号資産ウォレットのアプリを運営するバレー社のボビー・リー最高経営責任者(CEO)は、禁止措置の意図は単純に、個人投資家を相場の乱高下から守ることだと分析するが、銀行が暗号資産関連の取引を特定するのは至難の業だろうと言う。
「中国では毎日、数百万、ともすれば数十億件もの銀行取引が行われている。この中で、飲食や電子取引ではなく暗号資産関連サービスの決済が何件あるのかを把握するのは不可能に近い」
中国は2013年と17年にも暗号資産関連の禁止措置を発表した。こうした措置が何度も繰り返されているという事実が、抜け穴をふさぐことの難しさを物語っている。
ロイターが20日確認したところでは、中国の個人投資家は引き続きビットコインなどの暗号資産を買い、それをバイナンスなどの海外交換所で取引することが可能だ。購入の際の人民元決済は、銀行かオンライン決済プラットフォームを通じて行える。
マイナーから暗号資産の売却を請け負っている男性は「あなたがビットコインかイーサ(イーサリアム)を持っているとして、私がそれを買いたければ、私は銀行を介してあなたに送金するだけのことだ。ビットコインだのイーサだのと記入する必要はない」と語った。
この男性は、取引額があまりに大きければ銀行内のリスク管理に引っかかり、捕らえられる恐れはあると付け加えた。
<マイナーも冷静>
マイニング業界関係者も今回の措置にほとんど動じていない。ここでも関係者が理由に挙げるのは、当局が関連取引を特定することの難しさだ。
中国で活動するマイナーは、既に保有しているビットコインを人民元に換え、電気料金を払う必要がある。投資家とは反対方向の取引だ。
コンパス・マイニング社のトーマス・ヘラー最高事業責任者は「中国政府は時々取り締まりに乗り出すが、今のところマイナーが採掘したコインを人民元に換えるのはさほど困難ではない」と語る。
マイニングは中国にとって大きな産業で、一部推計によると世界の暗号資産供給の7割程度を占めている。もっとも近年はこの割合が低下したとの見方もある。
また、今回の措置では暗号資産関連の投資商品も禁止されたが、20日現在、こうした商品のオンライン販売は続いている。
中国で人気が急上昇した小型暗号資産「ファイルコイン」のマイナーが使うコンピューティングパワー(計算能力)に投資することで、「3年で元手を4倍にするチャンス」とうたうあるプラットフォームは、20日時点でまだ投資資金を受け付けている様子だった。
暗号資産関連の金融会社、バベル・ファイナンスのフレックス・ヤンCEOは強気の姿勢を変えていない。
ヤン氏は「ビットコインの価格は昨年3月に50%余り下落したが、最終的には反発して過去最高値を更新した」と指摘。「長期的に見れば、成長を目指すポートフォリオマネジャーにとってビットコインが優れた資産クラスであることに変わりはない」と語った。
(Samuel Shen記者、Andrew Galbraith記者)
関連コンテンツ
PR
PR
PR