- 2021/06/08 掲載
パワハラ防止、道半ば=専門家「あらゆる人が関心を」―トヨタ社員自殺
トヨタ自動車の若手社員の自殺をめぐり、同社が上司のパワーハラスメント(パワハラ)を認め、遺族と和解した。トヨタは7日、再発防止の徹底を誓った。企業にパワハラ対策が義務付けられて約1年。被害を訴える相談や訴訟は後を絶たず、取り組みは道半ばだ。専門家は「あらゆる人が関心を持つべきだ」と指摘している。
トヨタによると、和解は今年4月、訴訟外で成立した。豊田章男社長が2度にわたり遺族に直接謝罪したほか、匿名相談窓口の設置や若手社員へのアンケートなどの対策を講じた。トヨタは「パワハラ行為の撲滅を目指す」とコメントする一方、「制度を作ったから大丈夫だというわけではない」(幹部)と気を引き締める。
企業のパワハラをめぐっては、三菱電機でも2019年8月に新入社員(当時)が自殺。同社は管理職の評価に同僚や部下も加わる仕組みを取り入れるなど、再発防止を進めてきた。
厚生労働省によると、19年度に全国の労働局などに寄せられた相談のうち、民事トラブルでは「いじめ・嫌がらせ」に関するものが8万7570件と8年連続トップとなった。昨年6月、大企業に相談体制の整備などを義務付ける改正労働施策総合推進法が施行され、来年4月からは中小企業も対象になる。
ただ、労働法制に詳しい岡本明子弁護士は「撲滅は難しい」と話す。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が常態化する中、「あえて情報を伝えないなどのハラスメントが増える可能性がある」と指摘する。
成蹊大の原昌登教授(労働法)は「パワハラを減らすにはあらゆる人が関心を持つことが必要だ」と強調する。経団連は法施行から1年を機にパワハラ防止に向けたセミナーなどを検討しており、企業の理解を一段と深めたい考えだ。
【時事通信社】
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