- 2021/06/12 掲載
経産省、歯切れ悪い対応=海外企業誘致に影響―東芝報告書
東芝と経済産業省が連携して「物言う株主」である外資系ファンドの議決権行使に「不当な影響」を与えたとする外部弁護士の報告書をめぐり、経産省は内容の是非に関する判断を保留、歯切れの悪い対応に終始している。この問題をめぐっては官民が結束して外資の排除に動いたとの印象が強まりかねず、同省が進める半導体関連など海外企業誘致への影響を懸念する声も出ている。
報告書が問題視したのは、昨年7月の東芝株主総会に向けたやりとり。総会直前には同省課長が独自の取締役選任案提出に動く外資系ファンドに直接、「経産省のみならず政府全体の話として、外為法含め、事実関係を調査し始めると聞いている」「規制当局が本格的に動き始めると止めようがない」とクギを刺していたことなどを認定。東芝と同省が一体となって株主の権利行使を妨害しており、株主総会が「公正に運営されたとは言えない」と断じた。
報告書はまた、経産省参与(当時)の水野弘道氏が「東芝の事実上の依頼」に基づき主要株主に「相当のリスク」を指摘、外資系ファンドなどの提案に賛成しないよう促した点も認定した。
梶山弘志経済産業相は11日の記者会見で、「本件は東芝のガバナンスに関することだ」と述べ、まずは東芝が対応方針を示すべきだと強調。水野氏の関与をめぐっても、「個別の働き掛けをしたことはない」と否定した。
経産省は世界的に不足する半導体の安定供給確保に向け、台湾積体電路製造(TSMC)など先端技術を持つ海外企業の国内誘致を推進している。しかし、東芝の問題で日本の企業統治(コーポレートガバナンス)をめぐる政府の姿勢に不信が高まれば、こうした取り組みに水を差しかねない。同省幹部は「イメージは良くないが、今の段階では動きようがない」と困惑の表情を浮かべた。
【時事通信社】
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