- 2021/06/16 掲載
米IPO、年初来の調達額は1710億ドル 昨年実績上回り過去最高
新型コロナウイルス感染拡大を受けた米連邦準備理事会(FRB)の低金利・金融緩和策を背景に株式市場で企業のバリュエーションが高まっていることがIPOブームをもたらしている。
こうした状況は投機的な熱狂を巻き起こし、従来の企業のIPOだけでなく、特別買収目的会社(SPAC)によるIPOにも恩恵を与えている。
21年下期には、ソフトバンクグループなどが出資する中国配車サービス最大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)や、株式取引アプリ運営の米ロビンフッド・マーケッツ、電気自動車(EV)メーカーの米リビアン・オートモーティブなど注目を集める多くのスタートアップ企業が数十億ドル規模の案件を準備しており、IPOは新たな記録を打ち立てる見通しだ。
モルガン・スタンレーの米州株式資本市場部門共同責任者、エディ・モロイ氏は「市場が現在の水準付近を維持すれば、今夏から秋にかけて、IPOはかなり活発になるだろう」と指摘。
「木は永遠に空に向かって伸びるわけではないので、毎年記録を更新することはないが、安定的に推移すると仮定すれば、22年も忙しい年になる」と語った。
SPACを除いた従来のIPOも、21年はすでに韓国のネット通販大手、クーパンなどを含め調達額が670億ドルに達しており、過去最高となる見通しだ。
市場関係者らによると、SPACを除く従来のIPO調達額は第3・四半期末までに500億ドル近くに上る可能性があるとみられている。ディアロジックによると、第2・四半期は6月15日までの時点で241億ドルに達している。
関係筋によると、ディディの案件だけで調達額は100億ドル近くとなる可能性がある。
投資銀行関係者は、21年末までに米IPOが2500億─3000億ドル以上と、かつては考えられなかった規模に達する可能性があるとみている。
<SPACがIPOけん引>
IPOを押し上げているのは主にSPAC案件だ。
SPACリサーチのデータによると、SPACの調達額は第1・四半期だけで1000億ドル近くと、20年全体の830億ドルを大きく上回った。
このところ、SPACの案件は伸び悩んでいるものの、今年はこれまでに339のSPACが設立され、IPO全体の3分の2近い約1050億ドルを調達している。20年にはSPACの調達額はIPO全体の半分以下だった。
ドイツ銀行の株式資本市場グローバル共同責任者、ジェフ・ブンツェル氏は「バリュエーションは良好で、資金の流れも強い。成功する活発なIPO市場に必要な全ての要素が今も失われていない」と語った。
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