- 2021/06/27 掲載
日の丸半導体、再興への道は=識者インタビュー
デジタル化の進展で半導体の重要性が高まっている。米中貿易摩擦の焦点の一つで、日本も経済安全保障に直結する戦略物資として同産業の保護・育成に本腰を入れ始めた。かつて世界市場を席巻した「日の丸半導体」の再興へ、どう取り組むべきか。つくばイノベーションアリーナ(TIA)の運営最高会議議長を務める東哲郎氏(東京エレクトロン前社長)と、シリコンに代わる次世代半導体として期待される「窒化ガリウム」を使った青色発光ダイオード(LED)でノーベル物理学賞を受賞した名古屋大の天野浩教授に聞いた。
◇最終製品との結び付き重要=東哲郎TIA運営最高会議議長
―半導体の重要性が増している。
新型コロナウイルスの感染拡大で、自動車から小売業まで多様な産業でデジタル化が進み、収束後もこの動きは継続するだろう。脱炭素化を進める上でも半導体技術はカギになる。
―産業の現状は。
非常に強いアプリケーション(ソフト)と結び付いて開発・設計を行う米国と、それを軸に製造を行う台湾という国際水平分業の形ができる一方、日本は弱体化の傾向にある。かつて半導体生産で50%くらいあった世界シェアは、現在10%程度だ。
―復活への道は。
最終製品との結び付きや海外企業との連携方法を戦略的に考え、価値を生み出すような分業を構築する必要がある。日本が強みを持つ自動車や工場の自動化(FA)などとともに半導体を強化すべきだ。
―国に対して望むことは。
半導体に携わって40年以上になるが、今までにない形で国が力を入れようとしており、予算も従来とはレベルが違う。国も企業も大規模かつ継続性のある形で投資する姿勢が重要だ。
◇「窒化ガリウム」で先導役に=天野浩名古屋大教授
―窒化ガリウムへの期待は。
窒化ガリウムは次世代半導体として非常に期待できる。(通信の高速大容量規格)5Gの先にある「ビヨンド5G」や電気自動車(EV)、家電などで主流になり得るポテンシャルがある。
―研究の進捗(しんちょく)状況は。
環境省の事業下で窒化ガリウムを活用したEVを開発し、走行試験を行っている。さらに、大学や企業など71機関が参加するコンソーシアム(共同事業体)があり、高信頼性と低コスト化の両立に向けた新技術の研究開発を進めている。
―課題は。
現状、パワーデバイス用基板はシリコンなどが主流。窒化ガリウムのものはまだ実用化していない。1チップでたくさんの電流を流すことができるが、コストの低減が課題。新しい製造装置の開発なども必要だ。
―窒化ガリウムにこだわる理由は。
日本に優位性があるからだ。日本の市場シェアは、シリコン基板でも50%以上あるが、窒化ガリウム基板なら85%程度が見込める。日本が世界を先導して開発を進める必要がある。
【時事通信社】 〔写真説明〕つくばイノベーションアリーナ(TIA)運営最高会議議長の東哲郎氏
〔写真説明〕窒化ガリウム応用の電気自動車を披露する天野浩名古屋大教授=2019年10月、名古屋市
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