- 2021/07/04 掲載
最低賃金、3%上げ必要=成長戦略会議メンバー・アトキンソン氏
政府の成長戦略会議の有識者メンバーを務めるデービッド・アトキンソン氏は3日までに時事通信のインタビューに応じ、2021年度の最低賃金について、3%以上の引き上げが必要との考えを示した。労働生産性が低い中小企業の成長には、引き上げを機に安価な労働力に依存した経営モデルの転換を経営者に促す必要があると訴えた。
アトキンソン氏は訪日外国人旅行客の誘致を提言するなど菅義偉首相のブレーンとされる。
最低賃金をめぐり、アトキンソン氏は新型コロナウイルス禍でも米欧は20年に約5%、21年も2~4%引き上げていると指摘。日本は20年度、全国平均で1円増の時給902円と事実上据え置いたが、「ワクチン接種の進展で国内景気は改善する。今年度も上げないという話にはならない」と主張。さらに「個人消費の活性化や格差是正にもつながる。日本も上げないと低下した労働分配率を是正する世界の流れに取り残される」と強調した。
最低賃金が先進国で最低水準にとどまる場合、「経営者が本来払うべき賃金を支払わず、生産性の低い企業の経営モデルを温存させてしまう」とも述べた。雇用の約7割を占める中小企業の規模を連携・合併などを含めて拡大し、生産性を向上させる必要があると提言。「企業の淘汰(とうた)を促すのではく、レベルアップしてもらう」と強調した。
日本商工会議所はコロナ禍の長期化で中小企業は厳しい経営が続いているとして、最低賃金の据え置きを求めている。アトキンソン氏は打撃が集中する宿泊・飲食・生活関連業が生み出す付加価値は国全体の5%にとどまると指摘し、「(苦境の)一部業種には支援策を講じつつ、経済全体のために引き上げるべきだ」と述べた。
政府が6月に決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」では、最低賃金を「より早期に1000円」に引き上げる方針を明記した。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える政府の成長戦略会議有識者メンバーのデービッド・アトキンソン氏=6月28日、東京都中央区
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