- 2021/07/05 掲載
アングル:注目集める高配当の米国企業、国債利回り低迷予想で
年間配当の増額が25年以上続く銘柄で構成される「プロシェアーズS&Pディビデンド・アリストクラッツ指数」に連動するETF(上場投資信託)は年初来の上昇率が14.3%で、指標となるS&P総合500種指数は15.8%だ。
しかし米連邦準備理事会(FRB)がタカ派的なトーンを強め、成長が天井にぶつかる兆しが出ているため、米国債利回りが再び上昇するとの期待は薄れており、一部の投資家は今後数カ月、こうした優れた配当実績を持つ銘柄は良好な投資先になるだろうと考えている。
S&Pディビデンド・アリストクラッツ指数の配当利回りは2.15%、10年物米国債の利回りは1.48%。S&Pディビデンド・アリストクラッツETFはなお5月の高値を4%ほど下回っている。
ガベリ・ファンズのポートフォリオマネジャー、ボブ・レイニンガー氏は「市場は増配と当期リターンの上昇が見込める企業への注目をますます高めるだろう」と述べた。
ゴールドマン・サックスの推計によると、S&P総合500種構成企業全体の配当の伸び率は今年と来年が6%と、現在の時価総額が織り込む成長率の0.8%を上回る見込み。昨年中に配当を縮小もしくは停止した57社のうち22社が配当を再開するか増やしており、さらに19社が年内までに増配を実施する公算が大きいという。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者、マーク・ハエフェレ氏によると、FRBによって株主還元に対する制限が緩和された金融機関が増配の動きをけん引する可能性が高い。
ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカなど大手米銀は6月28日、FRBのストレステスト(健全性審査)に合格したことから配当金を引き上げると発表した。アナリストの試算によると、金融機関の自社株買いと配当金支払いは最大で総額1300億ドルを超える可能性がある。
レイニンガー氏が目を付け始めているのはビール大手モルソン・クアーズ・ビバレッジなどの企業だ。同社は昨年配当を停止したが、今年4月に年内に再開する見通しだと発表。株価が年初来で19%近く上昇している。
ノーザン・トラストの最高投資責任者、ケイティー・ニクソン氏によると、配当金を支払っている銘柄は利益予想に基づく株価収益率(PER)が18倍以下と、長期間の中間値をやや下回っており、過去の水準に照らしてバリュエーションが高い市場で魅力が高まっている。
ニクソン氏は「向こう数年間は配当がインフレを上回るペースで増加し、世界的に利回りが乏しい中で投資家にとってキャッシュフローを生むチャンスになる」との見通しを示した。
NFJインベストメント・グループのバーンズ・マッキネー氏は、配当を実施している銘柄は優良な投資先になりそうで、景気回復が続けば配当金は増えると予想。新型コロナウイルス流行による経済のロックダウンの拡大で昨年配当を停止したり、縮小したりしたが、今年は配当を増やしそうな企業に注目している。
マッキネー氏は「インフレに遅れず、その間に(増配によって)利益を得ることができる企業がたくさんある」と指摘。こうした企業の例としてハネウェル・インターナショナル、ブロードコムや、S&P500種のエネルギーセクターを挙げた。
(David Randall記者)
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