- 2021/07/10 掲載
アングル:クリーンエネ投資拡大、最大1000万人の雇用生む可能性
同リポートはこうした事業の投資機会は総額2兆ドルに上り、地元の雇用とともに供給網の雇用創出にもつながることが見込まれると指摘。また温暖化物質排出抑制や、グリーン部門の新型コロナウイルス感染流行(パンデミック)からの回復を後押しするとみられている。
この調査は欧州気候財団(ECF)の委託で実施された。EYのグローバル・エネルギー・アドバイザー、Serge Colle氏は、世界で政府が適切な政策と規制を実行すれば「民間部門の再生可能関連投資が大きく加速する可能性がある」ことをリポートは示していると述べた
これらの事業が今後3年間に実施されれば、世界全体で再生可能エネルギー普及率が2倍以上に拡大する見通し。20カ国・地域(G20)含め、調査が対象にしている47カ国がこの10年に約束している温暖化物質排出削減量の22%を実現できるとみられている。
これは2030年までに地球の気温上昇を産業革命前の水準から最大1.5度に抑制するために必要な排出削減量の9%に相当するという。
<幅広い職種に恩恵>
雇用創出について最も恩恵を受ける余地があるのは中国と米国で、創出される雇用はそれぞれ200万人と180万人に達する見通し。インド、オーストラリア、ブラジル、英国、カナダでも、洋上・陸上の風力・太陽光・水力発電能力の拡大により、それぞれ数十万人の雇用増が見込まれる。
業務は建設や設備の設置、製造など熟練度の低い労働からエンジニアリングやプロジェクトマネジメントなどの専門職まで広範囲にわたる。
たとえば英国では、グリーンエネルギーへの投資拡大が持続可能な雇用創出と経済成長を支える可能性がある。特に、かつて石炭の産地だったイングランド北部や、石油・ガス生産地のスコットランドでは大規模な風力発電事業の整備が進んでおり、グリーン投資の拡大がその大きな支えになるとみられている。
現在英国で資金調達を準備している事業は、主に太陽光・風力発電のプロジェクト540件で、約43万9000人の雇用を生み出す可能性があるという。さらに、電力貯蔵、変電、送電部門を加えると、見込まれる総雇用数は62万5000人に達する可能性がある、とリポートは試算している。ECFは、これが実現すれば、コロナ禍で失われた雇用の90%を取り戻せるとしている。
<途上国での普及、先進国の姿勢がカギ>
ただ、トニー・ブレア元首相が運営するトニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所の(温暖化ガス排出量を実質ゼロにする)ネットゼロの専門家、ティム・ロード氏は、世界の多くの場所で、労働者が様々なクリーン技術とそれらの基づくサプライチェーンを展開できるだけのスキルをまだ持っていないと慎重な見方を示した。
同氏はこのリポート作成には関与していないが、「この移行は、洋上の石油・ガス関連労働者をつれてきて風力タービン操作の訓練を行ない皆が満足する、といった単純なものではない」と指摘。「明らかに一定の行き違いが生じるだろう」と述べた。
そのうえで、発電能力と再生可能エネルギー使用の拡大に必要な地元インフラと技術を開発するには、政府と企業の協力が不可欠と指摘。これができれば必要な投資の誘因につながるとした。
さらに同氏は、トムソン・ロイター財団に対し、人口の多くが電気を使うことができず、強い市場が形成されていない途上国では、難易度が一段と高いと指摘。11月にスコットランドで開催する第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は途上国を化石燃料からよりクリーンな発電に転換させるカギとなるが、それにはより富裕な諸国が脱炭素に対して明確なコミットメントを示さなければならないと述べた。
同氏は、「より規模の大きな国々が役割を果たしていると低所得諸国が感じる環境になれば、投資を巡る環境が前向きとなり始め、人々がそれを真剣に受け止めるようになる」と付け加えた。
(Megan Rowling記者)
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