- 2021/08/30 掲載
米の収入格差拡大に伴う貯蓄増、金利低下要因の可能性=米論文
経済学者は長年、米国の金利低下の主な要因を高齢化や成長鈍化などと考えてきた。
新たな論文は、米連邦準理事会(FRB)が景気を刺激も減速させもしない長期金利、いわゆる中立金利に注目。「Rスター」とも呼ばれるこの金利は貯蓄が増える際に低下する傾向がある。
経済学の一般理論では、ベビーブーマーの高齢化で、人口の大部分が人生で最も稼ぐ時期に入った、つまり典型的に貯蓄を増やす時期に入ったと考えられている。だが、所得の格差が広がり、人々はさらに貯蓄を増やそうとしている可能性があるというのが新たな論文の見解だ。
論文の執筆者はプリンストン大学のアティフ・ミアン教授、ハーバード大学のラドヴィグ・ストラウブ准教授、シカゴ大学経営大学院のアミール・サフィ教授。
論文は、収入上位10%が稼ぐ収入の割合は1980年代以降、着実に増えており、中立金利の「低下パターンとほぼ連動している」と指摘。収入の多い世帯ほど低収入の世帯よりも貯蓄する傾向があると結論付けた。
例えば、1925─34年に生まれた人が人生で最も稼ぐ時期とされる45─54歳になったとき、収入上位10%がこの集団の収入全体の33%を稼いでいた。だが、1965─74年生まれが45─54歳になるとき、収入上位10%が稼ぐ収入の割合はこの集団の全収入の47%に拡大した。
論文執筆者によると、人口動態の変化は中立金利の低下とさほど強く連動していない。45─64歳の集団の収入の割合はベビーブーマー世代が加わった1990年代から2010年にかけて増えたが、2010年にベビーブーマーが引退し始めると低下し始めた。一方、中立金利はその間もほぼ低下していたという。
論文はまた、近い将来に収入格差が軽減される兆しはほとんどないと指摘した。論文の見解が正しければ、米国の低金利は当面続く可能性がある。
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