- 2021/10/09 掲載
焦点:米2地区連銀の次期総裁選び、多様化した理事会の本領発揮か
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、両連銀の次期総裁に多様性のある人材を探すと約束している。ローゼングレン氏とカプラン氏はいずれも個人的な金融取引を巡って批判され、退任した。
パウエル議長やブレイナード理事、イエレン前議長らの下、FRBは数年前から意図的に地区連銀を変化させてきた。その結果、人選を担う地区連銀の理事会はローゼングレン、カプラン両氏が指名された時と比べ、女性とマイノリティーが大きく増えている。
12地区連銀では、次期総裁の人選に加わる資格のある理事の51%が女性で48%がマイノリティーだ。
これは典型的な米国の企業より遥かに多様性に富み、連銀がほんの数年前と比べ大きく変わったことを示している。FRBの内部関係者によると、こうした理事会大改造の狙いは、経済に対する幅広い洞察を得ることに加え、総裁候補者探しの網を広げられるような多様な顔ぶれをそろえておくことにある。
カプラン氏が2015年にダラス連銀の総裁に就任した際、地区連銀全体で理事の過半数は同氏のような白人男性だった。
ローゼングレン氏がボストン連銀の総裁に就いた07年には、同連銀の理事は全員白人で、そのうち2人が女性だった。
今年、ローゼングレン氏の後任の人選にあたる理事6人のうち4人は女性、2人はマイノリティーだ。
それでも十分ではないとの批判もある。
ローゼングレン氏はボストン連銀総裁に指名される前、同連銀にエコノミストとして数年勤務していた。カプラン氏はFRBに勤務した経歴はなかったが、米投資銀行ゴールドマン・サックスで長く経験を積んだ上、ダラス連銀が起用した人材会社のディレクターを務めていた。
人種格差や経済格差の問題に取り組む団体「センター・フォー・ポピュラー・デモクラシー」のディレクター、ベンジャミン・ダルチン氏は「問題は、FRBの中で最も重要な幹部の一部を選定するプロセスが極めてインサイダー的になっていることにある」と述べた。
だが、今回の人選で多様性を重視するなら、FRBは候補者を外部から選ばざるを得ないかもしれない。例えばFRBで働くエコノミスト数百人のうち、黒人は片手で数えられるほどしかいない。
FRBで現在、唯一黒人の政策決定者であるアトランタ連銀のボスティック総裁も1990年代にFRBでエコノミストを務めていたが、総裁就任の直前には南カリフォルニア大学の教授だった。
連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー18人のうち、黒人以外の唯一のマイノリティーであるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、就任前にFRBに勤務した経歴はない。他の地区連銀10行の総裁のうち、3人は白人女性、残る7人は白人男性だ。
ホワイトウスが指名するFRB本部になると理事の多様性はさらに小さく、6人全員が白人で、女性は2人にとどまっている。
ダラス連銀とボストン連銀はいずれも、予定している人選について詳しくは公表していない。だがボストン連銀は1日、理事会の構成は多様であり、人選委員会は「開かれた、幅広い、厳格な姿勢で」臨むと表明した。
地区連銀は通常、人選委員会の中から次期総裁を選ぶ。人選委員会は地区連銀理事会の議長が率い、外部の人材会社から助言を受ける。FRB本部の理事会は意見を提供し、最終的に承認する。
ボストン連銀の理事会は、議長が白人女性、副議長が黒人男性。ダラス連銀の理事会は議長と副議長がいずれも白人男性となっている。
(Ann Saphir記者)
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