- 2022/03/01 掲載
遠のく輸入規制撤廃=処理水海洋放出で―大日本水産会専務・東日本大震災11年
漁業者団体や流通、加工業者などで構成する「大日本水産会」(東京都港区)の内海和彦専務理事がインタビューに応じた。14カ国・地域による福島県産などの食品に対する輸入規制について、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水が海洋放出されると「(規制撤廃の)道は遠のくだろう」との見方を示した。主なやりとりは次の通り。
―処理水の海洋放出をどう受け止めるか。
漁業者を中心に、さらに風評被害が出るとの懸念が大きい。国内でも「福島産は健康に悪い」と考える人がおり、中国など14カ国・地域で東北産食品の輸入規制が維持されたままだ。こうした風評被害が収まらない中での処理水放出は、水産関係者として良しとはできない。
―輸入規制の早期撤廃へ処理水放出がどう影響するか。
処理水放出によって、規制の殻がよりかたくなりそうだ。規制を何とかなくしてほしいが、その道は遠のくだろう。観光など影響はさまざまなところで出てくる。
―政府の対応をどうみるか。
科学的数値は安全でも、実際に安心できるかは人間の心の問題だ。解きほぐすためには、十分な対話で対策への信頼を得ることが大事。現場の漁業者や県知事らも反対しており、政府の措置がまだ現場に浸透しているわけではない。意思疎通を図り、お互いを信頼し、一定の妥協点を見いだす作業が大事で、そうしないと許容する段階にはいかない。中国や韓国に対しても同様だ。
―大日本水産会としてどう対応するか。
民間同士の交流を通じ、(相手国の)水産団体から政府に規制撤廃を進言するよう働き掛けを行っている。また、原発事故後に失った販路回復を目指す漁業者らへの支援を今後も続ける考えだ。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える大日本水産会の内海和彦専務理事=1月19日、東京都港区 〔写真説明〕インタビューに答える大日本水産会の内海和彦専務理事=1月19日、東京都港区
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