• 2022/03/03 掲載

原発政策、漂流の11年=国内で強い不信感、再稼働進まず―欧米で再評価の動きも

時事通信社

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東京電力福島第1原発事故が国民に刻み込んだ原発への根強い不信感は、事故から11年が経過しても一向に弱まる気配がない。電力各社で不祥事が頻発したこともあり、震災後に再稼働した原発はわずか10基。脱炭素の動きが加速する中、欧米では運転時に温室効果ガスを排出しない利点を持つ原発を再評価する動きもあるが、日本の原発政策は方向性を示せないまま漂流している。

政府が昨年10月に策定した第6次エネルギー基本計画は、2030年度の電源構成に占める原発の比率目標を前計画と同じ20~22%で維持したが、20年度の実績(速報値)は3.9%にとどまる。目標実現には、原子力規制委員会に再稼働を申請済みの全27基の稼働が必要で、実現のハードルは高い。既存原発の「高経年化」が進む中、計画に原発の新増設を盛り込もうとする動きもあったが、「再稼働と安全運転の実績が不足している」(経済産業省幹部)として、断念に追い込まれた。

一方、世界では脱炭素化の潮流を背景に、原発を再評価する動きが出ている。欧州連合(EU)は、脱炭素化に貢献するエネルギーと見なせる投資対象を示す「EUタクソノミー」に、原発を条件付きで加える最終案を公表。米国でも、バイデン政権が次世代原発と位置付けられる高速炉の新規開発を後押ししている。核のごみの処分地選定でもフィンランドなどが先行している。

しかし、日本国内では安全性への懸念から依然として原発活用に否定的な声が強い。産業界には脱炭素電源として原発の有用性を訴える声があるほか、原発や関連施設が立地する地域でも財源確保の観点から再稼働や核燃料サイクルを前向きに受け止める声があるものの、活用に向けた機運は高まっていない。

脱炭素化に向けては温室効果ガスの排出が多い火力発電を減らす必要があるが、再生可能エネルギーの発電量が不安定なため、原発を活用することが避けては通れないとみられる。エネルギー政策に精通する与党幹部も「次の『骨太の方針(経済財政運営の基本指針)』に新増設などの方針を盛り込めるかがカギだ」と指摘する。ただ、国民的な議論を欠いた現状では原発推進にも脱原発にもかじを切れず、中途半端なエネルギー政策が続く懸念が拭えない。

【時事通信社】 〔写真説明〕東京電力福島第1原発で廃炉作業の進捗(しんちょく)状況について説明を受ける原子力規制委員会の更田豊志委員長(手前)=2021年12月2日、福島県大熊町

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