- 2022/05/17 掲載
危機打開は難航=G7展望、識者に聞く
ドイツで18~20日に開かれる先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議では、対ロシア制裁やウクライナ支援が優先議題となる。20カ国・地域(G20)の枠組みが機能不全となり、G7の存在感は増しているが、不安定な国際金融市場を含め世界経済の危機的状況の打開は容易ではない。元財務官の榊原英資氏とみずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストに展望を聞いた。
◇G7政策協調に存在感=為替介入、米の合意得られず―榊原英資元財務官
―先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議がドイツで18~20日に開かれる。
新型コロナウイルスとロシアによるウクライナ侵攻で、世界経済は激しく減速している。(中国、ロシアなども参加する)20カ国・地域(G20)では意見がまとまらないが、経済構造の似たG7では(政策協調に向けた)対話ができるので存在感は高まっている。それでも、リーマン・ショック以来の危機的な状況下で解決策を見いだすのは簡単ではない。
―円安・ドル高が急速に進んでいる。
米国はインフレを抑え込むため利上げにかじを切ったが、日本は金融緩和を続けている。日米の金融政策の差によって円安になっている。日本売りで円安になっている状況ではないので、それほど懸念する必要はないだろう。
―為替介入ができる状況か。
円・ドル相場で介入するには米国との合意が必要だ。ただ、米国はインフレ対策という点でもドル高の方が都合が良く、現状に満足している。合意は得られないだろう。
―円安は日本経済にプラスか。
円高のメリットを認識すべきだ。日本企業が海外に投資するにも円高の方が有利だ。企業は海外生産を増やしており、円安を背景に輸出を促進しようという時代ではない。
◇ウクライナ対応が優先課題=円安阻止は経済強化で―みずほ証券山本雅文氏
―先進7カ国(G7)財務相会議の展望は。
ウクライナ情勢が全世界的な問題だ。金融市場全体では、(米国の金融引き締めの影響で)株価が下落している。新型コロナウイルス対策として中国が実施しているロックダウン(都市封鎖)により世界的に景気見通しが悪化しており、中国に経済安定化への対応を求める可能性はある。
―日本は急激な円安を懸念している。
為替を懸念している国は日本ぐらいだ。声明文に(過度な変動への懸念などの)決まり文句を入れたいと努力するだろう。だが、為替に関する従来の合意事項を再確認できても、(協調介入などの)行動につながることはないと考えている。
―円安是正へ協調介入は困難か。
対ドルでの円相場は、日米の金融政策の違いによる金利差に連動しており、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿った動きだ。インフレ抑制を最大の政治課題とする米国は、インフレを加速させるドル安に協力する気はない。
―政府・日銀が取り得る手段は。
円安を止めたいのなら、日本経済を強くしなければいけない。化石燃料輸入(への依存)を減らし、対日投資を加速させるような政策が必要だ。来年3月末には1ドル=136円まで円安が進むと想定している。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える榊原英資元財務官=10日、東京都港区 〔写真説明〕山本雅文氏
みずほ証券チーフ為替ストラテジスト(同社提供)
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