- 2022/07/15 掲載
国際協調の行方は=G20会議―識者インタビュー
20カ国・地域(G20)は15、16両日、財務相・中央銀行総裁会議をインドネシアのバリ島で開く。ウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応をめぐり、参加国の分断は深まっている。物価高騰、食料危機など世界経済の課題の解決でどこまで協調できるのか。三井住友銀行国際金融研究所の古沢満宏理事長(元財務省財務官)と、みずほリサーチ&テクノロジーズで世界経済を分析する太田智之チーフエコノミストに展望を聞いた。
◇できる限りの協調重要 古沢満宏元財務官
―G20の議論の見通しは。
インフレにより先進国だけでなく新興国でも利上げが進む中、世界経済に対する認識を共有することが大切だ。今回はウクライナ問題が最大のテーマだが、食料価格の高騰や脱炭素、途上国の債務再編など待ったなしの課題も山積している。できる限りの国際協調が重要だ。
―ロシアへの対応はどうか。
ウクライナ侵攻が許されないという点では、ロシアを除き参加国の認識は一致していると思う。一方、どういう対応を取るのかで国によって立場の相違があり、制裁も一枚岩になっていない。ただ侵攻は許されず、ロシアへの圧力は必要だろう。
―金融市場が不安定化している。
各国の中央銀行の利上げで金融資本市場は変動幅が拡大しており、債務返済が難しくなったスリランカは国際通貨基金(IMF)に支援を求めた。こうした動きについても議論されるだろう。
―円安抑制の議論は期待できるか。
為替については、(過度な変動をけん制する)過去の合意を確認することはあるかもしれないが、新たに何かを打ち出す会合ではない。
◇食料危機の議論に期待 太田智之みずほリサーチ&テクノロジーズチーフエコノミスト
―G20の注目点は。
最大のテーマは食料問題だろう。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する制裁の話は、G20参加国に親ロシアの国もある中では難しい。課題として唯一、共通認識があるのは食料危機だ。世界が民主主義、権威主義、新興国の3陣営に分かれるのではないかと言われる中、議論する場があることは重要だ。ただ、過度な期待はできない。
―米国はロシア産石油の価格に上限を設定する新たな制裁案に協力する国を増やしたい考えだ。
恐らくG20では議論にならないだろう。議論すること自体、ロシア、欧米への姿勢を明確にせよと迫るようなものだ。参加国の中にはそれをしたくない国もある。経済的には魅力的な提案であっても、中国やインドも政治的に今の(ロシア寄りの)ポジションを崩すことはないと思う。
―日本の役割は。
本来は(ロシアへの対応が異なる国との)橋渡し役となるべきだが、ウクライナ危機で日本は先進7カ国(G7)の一員として欧米と結束を強めているので難しい。G7メンバーと歩調を合わせながら、国際協調に向けて中国などに働き掛けを続けることが必要だろう。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える元財務官で三井住友銀行国際金融研究所の古沢満宏理事長=11日、東京都千代田区 〔写真説明〕インタビューに答えるみずほリサーチ&テクノロジーズの太田智之チーフエコノミスト=7日、東京都千代田区
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