• 2022/09/28 掲載

アングル:米利上げ加速、新興国に新たな打撃 影響に濃淡も

ロイター

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[ロンドン 27日 ロイター] - 米国の政策金利が世界金融危機直前の水準まで上昇するとの見通しが強まったことで、コロナ禍からの回復に努めてきた新興国市場に新たな暗雲が漂い始めた。

過去の新興国市場危機の多くは、ドル高と米金利の上昇に関係していた。新興国は自国通貨を支えてインフレ圧力を抑えるために金融引き締めを余儀なくされ、ドル高によりドル建て債務の返済コストが上がるという構図だ。

今回はこれまでと少し違う点がある。新興国中銀は、金融引き締めの後発組ではなく先発組であり、早くも2021年夏に利上げに着手した国も多かった。

しかし先進国中銀がインフレ抑止のための利上げに加わった今、特に規模が小さくリスクの高い途上国への圧力は強まっている。市場の予想では、米連邦準備理事会(FRB)は来年3月までに政策金利を4.6%に引き上げる見通しだ。

FRBが、2023年には利上げしないとの予想を示していたのは、ほんの1年前のことだ。

フィニステール・キャピタルのダミエン・ブチェット最高投資責任者(CIO)は「今年は最悪だ」と言う。「FRBと欧州中央銀行(ECB)が金融環境の引き締めで後手に回った」からだ。

最近の報告によると、世界最貧国の一部は2024年までに債務返済額が過去10年で最高の690億ドル(約10兆円)に上る見通しだ。

今年はウクライナ戦争のあおりで、リセッション(景気後退)の恐れとエネルギーショックが同時に各国を襲った。その中でも新興国の資産は特に大きく売られている。

MSCI新興国株指数は年初から約28%下げ、欧州と米国の主要株価指数が20%前後の下落なのに比べてアンダーパフォームしている。自国通貨建て、ドル建ての両方で新興国債券のリターンは大幅なマイナスとなり、通貨も、主に中南米の一部諸国を除いて急落している。

<資本逃避>

国際金融協会(IIF)のデータでは、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、新興国資産は過去最大の資本流出に見舞われた。中国を除く新興国市場からの資本流出が止まったのはようやく8月になってからで、FRBの量的緩和縮小が市場を混乱させた2013年の「テーパータントラム」に匹敵する流出規模だったと、IIFは9月に報告している。

UBSの新興国市場ストラテジー責任者、マニク・ナライン氏は「新興国市場の命運は相変わらずFRBの動きに大きく左右されている」と語る。

ロイターの計算によると、主要な新興国市場の中銀はインフレと闘うため、年初から8月末までに合計6000ベーシスポイント(bp)近い利上げを実施した。

しかし金融引き締めは経済成長に水を差す働きもする。国際金融機関の幹部やアナリスは早くから、FRBやECBの利上げは世界の金融環境を過度に引き締め、世界的なリセッションを招きかねないと警鐘を鳴らしてきた。

M&Gインベストメンツの新興国市場債券責任者、クラウディア・カリク氏は、新興国によって引き締めサイクルの段階が異なると指摘。チリやブラジルなど中南米諸国の一部では、市場が来年後半の利下げを織り込み始めているとロイターに語った。

中東欧の中銀は、あと数回利上げを続ける必要があるものの、やはり利上げサイクルの終わりに近づいているという。

<問題はフロンティア市場>

経済規模が大きな新興国の多くは、比較的良好なファンダメンタルズ(基礎的条件)に恵まれている。ブラジル、メキシコ、南アフリカなどは利上げをしつつ、資源価格高騰のおかげで外貨準備を積み増して健全な貿易収支を享受している。こうした国々は資本市場に厚みがあり流動性も高いため、国内での資金調達に専念できる。

しかし規模が小さく、リスクの高い新興国市場にはそうした余裕がほとんどない。

国際市場で債券を発行している「フロンティア市場」国のうち、過去最多の14カ国で、米国債を基準とした債券利回りプレミアムが1000bpを超えている。エジプト、ケニアなど、この水準に迫る国々は他にも多くある。

こうした国々は現在、実質的に市場から締め出され、借り換えが不可能になっている。エジプトやガーナなど、これらの多くが国際通貨基金(IMF)に資金支援を仰いでいる。

イタウ・アセット・マネジメントの新興国市場ハードカレンシー債責任者、ラファエル・カシン氏は、金利がいつまで高止まりするかを投資家は見極めたがっていると説明。「一時的であれば、問題はない。大半の国々は今年や来年に多額の資金手当を必要としていない。本当に重要なのは長期的に何が起こるかだ」と語った。

(Karin Strohecker 記者、 Jorgelina do Rosario記者) 

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