- 2026/07/10 掲載
タバコ休憩よりヤバい「生産性の敵」…年間7兆円を奪う“見えない損失”の正体とは
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
「たばこ休憩」をめぐる終わりなき論争
たばこ休憩に腹を立てる経営者は多い。1回の離席で10分、15分と席を空けられ、その間は当然ながら仕事が止まる。かたわらで非喫煙者は黙々と手を動かし続けている。経営者の視点に立てば、これは生産性を蝕む純然たる無駄に見える。気持ちはわからないでもない。
だが、ここで問いたい。なぜ経営者はたばこ休憩にだけ、これほど神経を尖らせるのか。
理由は単純である。「見える」からだ。席を立つ。喫煙所まで歩く。10分ほど戻ってこない。
この行動は管理者の目にくっきりと映る。労働科学ではこれを「アブセンティーズム」と呼ぶ。つまり物理的な離脱として捉える。欠勤も遅刻もたばこ休憩も、すべて「見える損失」だ。見えるからこそ、経営者は取り締まる。
筆者自身、プレジデントの編集長として人を束ねていた頃は、自分の目に見えるものは信じ、目に見えないものはどうにも信じられなかった。多くの経営者が同じ罠にはまっている。見える損失は管理しやすい。勤怠システムに数字として刻まれ、誰の目にも明らかで、対策も立てやすい。だからこそ、人はそこにばかり注意を奪われる。
企業の損失につながる「意外な原因」
問題は、企業の利益を本当にむしばんでいるのが、この見える損失ではないという点にある。座席に着いたまま、能力を失っている社員。こちら「プレゼンティーズム」と呼ぶ。経営の課題として、グローバルに多くの企業が捉えられるようになった。そして近年の研究は、「生産性を落とす原因」がここにあることを次々と突きつけている。米国のLoeppkeらが2009年に医学誌『Journal of Occupational and Environmental Medicine』へ発表した研究は、10社・5万人超を対象に医療費レセプトと労働パフォーマンス調査を突き合わせ、従業員の健康にまつわる総コストのうち直接的な医療費が占めるのはわずか4分の1にすぎず、残りの4分の3は生産性の損失であり、その最大の要因こそがこのプレゼンティーズムだと明らかにした。見えるものは氷山の一角であり、海面下に本体が沈んで見えないのだ。 【次ページ】たばこ休憩よりヤバい「生産性低下」する“あの状態”
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