• 2006/04/04 掲載

ビジネスを変革するSOAのすすめ(2/3)

アクセンチュア白川氏が語る、「ビジネスに生かすSOA」とは?

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SOAの活用事例

 連載第1回では、SOAの活用レベルを1から5まで紹介した。レベル5が将来の話だとしても、レベル3ないしは4に達している企業や政府機関は存在する。アクセンチュアがクライアントと共同でSOAに取り組んだ事例から、先進企業・政府機関がどのようにSOAを活用し、効果をあげているのかを検証する。


●事例1
 SOAによりシームレスな行政サービスを提供するポータルを構築
 [スペイン カタルーニャ自治州政府]


 カタルーニャ自治州政府はバルセロナに所在し、約630万人の人々に向けてさまざまな行政サービスを提供している。

 同政府の業務プロセスは大半が手作業であったが、教育、文化、商工業、交通、福祉、住宅などを担当する各部門・機関が独自にWebによる情報提供やオンラインサービスを提供してきた。結果、行政側には作業の重複や、部門・機関の間での不整合が発生し、利用者である市民や企業にとってはわかりにくく、時として満足のいくサービスが受けられないことがあった。

 市民サービスの向上と、企業誘致のため、またカタルーニャをITによるイノベーションを実践する先駆者として位置づけるために、2002年6月にAOC(Catalonian Open Administration)プロジェクトを開始し、その一環としてさまざまな行政サービスを一元的に利用可能なポータルを構築し、さらにそのポータ ルの運営と市民・行政との接点を一手に担う会社を立ち上げた。

 各部門・組織の既存システム群とポータルをSOAで統合することにより効率的な情報連携が可能となり、ポータル、コールセンター、窓口などいずれかのチャネルでいったん入力されたデータはすべてのチャネルから即座にアクセスできるようになった。下に概念図を示す。

【行政サービスポータル概念図】



 たとえば、市民が窓口に行って手続きを開始したとしたら、その進行状況をほかのさまざまなチャネルを通じても確認できるようになった。また、ポータルの設計は、組織の単位などの行政側の都合ではなく、市民がやりたいことをもとに行ったため、利便性が大いに向上した。結果として行政サービスに対する市民の満足度は向上し、職員の業務効率も大幅に改善された。
●事例2
 SOAを活用して顧客の利便性を高め、増収とコスト削減を実現
 [Société Nationale de Chemins de Fer Francais(SNCF)]


 SNCFは年間約8億人の乗客と1億3500万トンの貨物を輸送するフランス国有鉄道である。規制緩和後の新規参入や旅行サービスに対する顧客の要求が高まっていくにつれ激化していく競争の中で、SNCFは販売コストの削減、イールドマネジメント(限られた座席数で収益を最大化する管理)の向上、インターネットによるチケット販売の強化を目標としていた。

 SNCFはアクセンチュアと協力して新たにオンライン旅行ポータルを立ち上げ、パートナー各社のシステムと連携させることで、顧客アカウント情報を共有し、ホテルやレンタカーなどの旅行関連商品のクロスセル機会の向上を図った。SOAの標準インタフェース技術であるWebサービスを活用することで、パートナー企業のシステム機能をポータルに容易に組み込むことができた。

 品揃えと顧客サービスを充実させたことにより顧客アカウント数は急増し、ポータルは月間2500万の来訪者のあるヨーロッパで第2の旅行サイトとなった。結果としてSNCFのインターネットでのチケット販売数は80%増加した。これは月間1500万ユーロの増収を意味する。また、年間1500万ユーロの販売コスト削減効果があった。


●事例3
 SOAを駆使した「データ統合環境」により最新のロジスティックスを実現
 [海外政府 補給機関]


 アクセンチュアは某大国のすべての軍事組織に対する補給を一手に担っている政府機関(以下当機関)と共同でSOAを活用した「データ統合環境」を構築した。

 当機関は百万人を超える人員と数百の拠点を対象として400万種以上の消費財物資を取り扱っており、業務トランザクション件数は年間40億から多い年で90億にも上る。そのため、サプライチェーンを効率化してロジスティックスコストを削減するためには、在庫物資と業務プロセスの可視化が必要であった。

 膨大な在庫物資を管理するためにロジスティックス業務を集中処理するセンター、および数多くの政府機関とサプライヤをまたがってさまざまな情報を効率的に交換できる「データ統合環境(IDE)」を構築した。IDEは購入承認、ステータス更新、在庫検索と配布、輸送処理、会計処理など、ロジスティックス に関わるデータとプロセスを一元管理する。 これらのデータを政府機関と民間サプライヤとで共有することで、協調した需要予測、在庫の可視化、サプライヤの一括管理が可能となった。

 IDEの高度な要件を満たすため、Webサービス統合、リアルタイムデータ分析、ビジネスルールエンジンなどの最新技術を適用した。一方で軍用に耐えるパフォーマンスと信頼性も担保する必要があるため、プロジェクトの計画段階からアーキテクチャ設計と技術検証を実施した。これにより、柔軟かつスケーラ ビリティのあるアーキテクチャを構築することができた。

 成功要因としては、上記のような技術的要素に加え、ロジスティックス業務を刷新することに向けての関係者の意識改革を入念に計画して実行したことも忘れることはできない。

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