• 2006/08/07 掲載

王子製紙が北越製紙に対して敵対的買収。業界リーダーの3つの狙いとは?(2/2)

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王子製紙になくて、北越製紙にあるもの

 M&Aを仕掛ける目的はさまざまだが、自社に足りない部分を補うことができれば成功の可能性は高くなる。では、王子製紙になくて、北越製紙にあるものとは何か?図表①を参照して欲しい。図表①は企業を分析する際に使う主な指標を王子製紙、北越製紙、業界4位のレンゴーの3社で比較したものである。ちなみに算出のために使用した株価は、買収発表前の6月30日時点のものを使用した。

 まず、目につくのは北越製紙のPBRが1を切っていること。一般的にPBRが1を切っている企業は買収対象になりやすいと言われている。

 次に図表②は、2006年3月期に各社が発表した財務諸表から収益性、効率性、安全性を分析してみた。
収益性は高い数値の方が良い。素材産業は規模の経済が効きやすい業界であるため、規模で誇る王子製紙の強さが際立っている。

 効率性は「総資産回転率」「売上債権回転期間」「有形固定資産回転率」は高い方が効率性は高く、これらは全て王子製紙の方が良い結果となった。「在庫回転期間」は逆に低い方が効率性は高く、北越製紙の方が良かった。これは平均的に何日分の在庫を抱えているかを表す指標である。メーカーにとって在庫管理は大きな課題であるが、北越製紙は効率的な在庫管理を行っているといえる。

 そして、安定性では「株主資本比率」「流動比率」「当座比率」は高い方が良く、「固定比率」「固定長期適合率」は低い方が良い。これら数値ですべて北越製紙が王子製紙を上回るという結果になった。
M&A、王子製紙、北越製紙、製紙業界
図表②:王子製紙と北越製紙の比較その2


王子製紙の3つの狙い

 業界リーダーがその地位から脱落する際、要因の一つとして挙げられるのは、「イノベーションへの対応の遅れ」とハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセンは述べている。成熟した製紙業界において塗工紙はあらたな起爆剤になる可能性を秘めている。しかし王子製紙はそれへの対応で競合に出遅れている。早急な挽回が必要であると考えられる。

 業界リーダーの役割は、業界自体を反映させていく使命も負っている。業界の垣根がより一層低くなっている今、いつ代替品が登場するかわからない。それを登場しにくくするためにも業界全体を常に活性化させ、参入・移動障壁を高くする必要があるのだ。万一外資系企業に買収でもされたら業界自体の危機にも繋がりかねない。買収ターゲットにならないためにも企業価値の向上は緊急な課題である。

 業界リーダーの地位を保つためにはM&Aの成功は欠かせない。M&Aは買収完了で終わりではなく、シナジーをうまく発揮してこそ本当の意味での完了となる。そのためには相手の強みを活かす必要がある。自社の弱い部分を補うことこそが強みを活かせるのではないだろうか。

 「イノベーションへの対応」「業界リーダーの使命」「業界リーダーの地位堅持」。筆者が考えた今回、TOBを仕掛けた王子製紙の狙いを表したキーワードである。

このTOBは、成功するかどうか今はわからない。ただし、これからより一層厳しくなる製紙業界を取り巻く大競争時代に向けて、王子製紙にとっては絶対に成功させなければならないTOBだということは間違いのない真実であろう。

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