- 2006/10/04 掲載
関西流ベタベタIT商法の挑戦3~空いている道を走れ(2/2)
そんな中、関西ではユニークな分野にITを持ち込んで、ガッチリ儲ける会社が現れた。なんと、お寺に卒塔婆用のプリンターを売り込んだのだ。キーワードは「タブーへの挑戦」。
大阪に本社を持つティーティーエヌの武田賢一社長は参入のきっかけをこう語る。「友人の住職から、『卒塔婆を書くのに時間がかかって仕方がない。特にお盆のシーズンは寝る間も無いくらいだから。何とかならんかなあ』と相談をうけたことがあったんです」。
普通なら、「そうですかぁ」と聞き逃しそうなものだが、武田社長は違った。これをビジネスチャンスと捉え、システム開発の会社を辞めて起業したのだ。
まずはプリンターを卒塔婆用に改造。次に梵字フォントの開発に着手。梵字とは古代サンスクリット語の基礎にもなっている文字で、仏教には欠かせないもの。しかし、特徴的で通常は判読ができないくらい難しい。
これをクリアした後は、檀家データ登録用ソフトを作成。檀家の住所、電話番号は元より、命日や戒名まで登録できる。これは評判が良く、月別の法事一覧表示で卒塔婆の書き漏れが無くなった。他にも誤字脱字が無いことから檀家にも好評だという。
「うちの住職は字が下手で本当に供養されているのかが心配でした。でも、卒塔婆プリンターの導入で綺麗な戒名が実現できました。天国のおじいちゃんも、きっと喜んでいると思います」という通販番組のようなベタな意見も聞かれる。
このプリンターは「おとば用人」と命名され68万2500円という値段にも関わらず、3年間で200寺に普及。口コミを中心にどんどん広がっている。他にも位牌プリンター「白木君」(34万6500円)や経本用プリンター「筆小僧」(16万7790円)も好評で、3台同時購入をする寺院もあるという。
何より、武田社長のうまいところはサプライを商品化していること。専用インク(黒4720円)を始め、専用卒塔婆(6尺100枚入り43000円)などをラインナップ。檀家管理ソフト「舎利弗(しゃりふつ・サーバークライアント対応)」も売り出した。
関西商法の教えの一つに「商売は牛の涎(よだれ)のごとく細く長く切れそうで切れない」というのがある。マシンを売り切るだけでなく、サプライで毎度、メンテで毎度、ソフトで毎度と、お付き合いを続けるところはまさに商人の王道。
まさかの分野にITを持ち込んだ武田社長に競合相手は無い。現在、空いている道を驀進中だ。
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