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  • 【中国ビジネス最前線(6)】成長する中国企業に追われる日本の金型産業-川辺サンポート

  • 2007/06/01 掲載

【中国ビジネス最前線(6)】成長する中国企業に追われる日本の金型産業-川辺サンポート

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前編でご紹介した川辺サンポートの董事総経理(日本企業でいうところの社長)である高橋伸孝氏に、現在困っているという、ITインフラ、ライバル企業、労働者、経営陣の問題は何なのか、話を伺った。

解決策のないモバイルインフラの現状


川辺サンポートの董事総経理
高橋伸孝氏
CAMを操作する委託工場の中国人社員
 前編でご紹介した川辺サンポートの董事総経理(日本企業でいうところの社長)である高橋伸孝氏に、現在困っているという、ITインフラ、ライバル企業、労働者、経営陣の問題は何なのか、話を伺った。

 前述の通り広東省内、こと珠海デルタの高速道路のインフラは発達しており、物資の移動は中国の他の土地よりも高速に行われる。また鉄道にしても広州深セン間139KMを1時間強で走る高速鉄道が走る。バスや鉄道などの交通網の発達で人の移動もの時間も短縮した。

 いくら高速に移動できるインフラが整ったとはいえ、やはり移動には1時間以上時間がかかることが多い。その時間にメールをチェックができることで「ワークシェアリングや、やりとりの記録化ができることで業務の効率化ができるだけでなく、さらには迅速な返答で新規の注文が増加しますね」という。しかしメールはチェックできない。なぜなら中国で移動中にメールをチェックするとすれば、GSMなどの2G携帯電話をPCにつなげてメールを確認するしか手段がないからだ。高橋氏はまた「早く3G規格が出てほしいです。おそらく広東中の経営者はみな思っているのではないでしょうか」と次世代携帯電話の中国でのサービス開始を待ち望む。

海賊版により中国企業が日本企業に迫る

 ITの問題は通信インフラだけではない。日本の工作機械メーカーがリリースする高度な作業機械は、本来日本独自の技術がはいったものとして、中国には許可なく輸出できないものとなっている。工作機器メーカーの方針だけではなく、日本政府としても中国に送るときは煩雑な手続きをとらせている。が、中国の金型企業はどういうルートを使ってか、本来手に入るはずのない日本の最新の工作機械が入り、製品のクオリティも向上している。一方、同社も含め現地で展開する日系企業は、企業道徳を持つため入れてはならないものを入れるわけにもいかない状態が続く。

 また金型企業が必要な設備として、CADソフトも導入する必要があるが、これも中国では海賊版ソフトが流通しているため、最新のものがすぐ導入される。その上最近では、CADのコツ・ノウハウが詰まった支援ソフトですらも海賊版として安価に販売される。

 CADソフトならば中国全土的に海賊版の存在が確認できるが、マイナーなCAD支援ソフトは中国のほかの地域ではお目にかかれない。そういった金型業界用の特殊なソフトですら、この地域では海賊版が出回ってしまうのだ。「壊れても自前で修理。アフターサポートは不要」という中国的気質の本土メーカー、「メーカーが進出しない限りは導入できないし、海賊版は使えない」と正規販売を待つしかない日系企業。この差が日系企業と中国企業の差を縮める。「今は品質管理に差があるだけで、中国メーカーはかなり追いついています」と高橋氏は語る。

変わる人材、変わらぬ人材にも問題


委託工場の製品サンプル

委託工場内の様子
 人材面でも問題がある。日本人に比べ中国人、香港人はドライで、よりよい勤務環境と高所得を求め出て労働者がすぐに他社に移ってしまい、そのため技術が流出してしまう。給料だけでなく、労働環境、たとえば休暇を取れるのかというところも労働者は気にするようになった。「周りの日系企業さんもそうらしいですが、特に大型連休の春節(旧正月)に社員の10%がいなくなる傾向があります」と高橋氏。その対策として「労働力の流出を防ぐため、地元の人間をできるだけ雇うようにしています」という。

 また人材の問題は労働者だけではない。中国人や香港人は独立心が強く会社から出てすぐのれんわけとなってしまうのも頭を悩ませる。その背景には経営陣の問題もある。高橋氏は「リーダーが10年間変わらないのです。つまりリーダーが一線をひいて、下の人間が上にあがって下の人間がやる気になるような会社のシステムがなく、人を成長させよう、会社を一生涯存続させようという意思が見られない、今しか考えておらず将来が見えていないことこそ最大の問題だと思っています」と指摘。

 その上で「資本提携がない以上どうこう言えないし限界があります。そこで川辺サンポートの独資の企業をつくり、全社員に株を持たせることで責任感を与えようと思っています。もちろん誰もが頑張れば上にいける会社のシステムにします」という計画を高橋氏は抱く。

 「独資の企業をつくるというスタンスについて同調する中国人社員もおり、この人は、と思う人は引き抜くつもりです」

 川辺製作所では2年日本、5年華南、2年日本、5年華東に派遣し将来のリーダーを育てている。これは日本式の将来も会社を存続させ、伸ばすためのノウハウが詰まっている。高橋氏は川辺サンポートにおいても、この企業文化を利用し、また日本の金型業界にあるのれんわけの文化を再考することで、中国内の関連会社の長期安定成長を見込む。

山谷剛史
海外専門ITライター。守備範囲は中国・東南アジア・インド・北欧など。現在主に中国に滞在し、中国関連の記事を複数メディアで執筆。一般誌にも時々執筆するが、とはいえノンポリティカルな執筆が基本。統計数字だけではなく、できる限り誰にでも読めて分かり、匂いや雰囲気を感じることができる記事をつくるのがポリシー。そのために裕福な人々ではなく、国民の大部分である平民層以下にスポットを当て、現地で体を張って取材。

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