• 2007/08/27 掲載

【中国ビジネス最前線(8)】文化の違いをどう克服するのか-花かず(2/2)

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中国人でもマネできないもの、それは確かなセンス


花かずの住宅地店舗の前にて。笑顔を絶やさない同社のスタッフ
 前編で紹介したように、新興大規模団地「世紀城」に店舗を構えることになった花かずは、中国の慣習をうまく取り入れ、アレンジする姿勢が功を奏し、現在はさまざまな場所で評価され、しかもそれがマネされている。

 “マネ”ということについて山浦氏は次のようなエピソードを語ってくれた。「ホテルに1つ花輪をオーダーされたことがあり納品したら、翌日には細かい切り込みとかまで瓜二つのものがそのホテルでいくつも置かれていたことがありました。」

 大変な損害になるのでは、と危惧するところだが、「(中国の方は)細かいところまで真似しますね」とさほど困っている様子はない。というのも「デザインは1つではないので真似されても“仕方ない”ですみますね」ということらしいのだ。山浦氏に余裕があるのにはもう1つ大きな理由がある。

 中国の新築住宅というのは購入しても内装も何もなく、住むにはまずリフォーム業者に内装を依頼する必要がある。そんな住人がさらに内装に華を添えようと、花かずの店舗を訪れ「ちょっと家をみてほしい」と依頼するのだそうだ。そもそも総戸数が2万3400もあれば間取りも数多くの種類があるし、客の依頼も多種多様にわたる。

 中にはリフォームの完成度がよくないのか、壁に穴があいた部屋がある場合も。なので、部屋を彩る、時に穴などを隠すフラワーアレンジメントはマニュアル的なものでなく、培った技術からくる確かなセンスが必要となる。この場合、日本ではCGによるコーディネート・シミュレーションで相談に応じるが、ここでは習慣の違いもあり、ITは使わず実際の製品を通してコーディネートを提案するのだそうだ。

 こういったことが背景になり、花かずの昆明での2店舗での売上は、開店してふたをあけてみればホテルよりも住宅地の店舗のほうがいいという結果になった。店舗での造花の購入の売上以上に、各家にお邪魔し、その場所その場所にあった花飾りの提供することで発生する売上が大きいのである。

 ホテル店舗で足を引っ張っている事情の1つが中国特有の納期の早さだ。花輪作りも仕事の1つだがそれだけではない。会議があれば花を付けたバッチを作る。ところが中国におけるニーズは「(バッチは)花がくっついていれば、裏側は雑でもいい」という。その習慣により、オーダーから納品までの時間は日本とは比較にならないほど短く、中国式の妥協をしないと時間が足りなくなるのである。

 VIPルームが利用されれば、花をたくさん用意しなければならない。依頼する側の時間感覚も中国流だ。夜に翌日朝までに納品しなければならない仕事も依頼され、そうなれば夜を徹した仕事となるという。にも関わらず、山浦氏は「スタッフと一緒に一生懸作っていると、(店舗に)野次馬が集まるんですよ。その野次馬に『手伝ってよ』というと興味本位で無償のお手伝いをしてくれます。そういう雰囲気のある昆明は好きですね」と笑みを絶やさない。

デザインに悩んだら本社に頼るが、その時はITを活用


ホテルで山浦氏が中国人スタッフにレクチャー中。そんな山浦氏もデザインに悩むことが。
 司馬氏や山浦氏でもデザインに悩むときはある。そういうときは日本のスタッフがデッサンし、それをスキャンしたものをpdf化し、ファイルサイズを落としてメールで送信することで対処する。お互いフラワーアレンジメントの基礎ができるからこそ、デッサンのスキャンだけでイメージが伝わる。

 初めにホテルで中国人が受け入れるセンスを学んだこともあり、また本社からのバックアップもあって、利用者の住民に同店のフラワーアレンジメントは好評で、この店は口コミで広まっていった。特に広告らしい広告をしないうちに地元の世紀城の住民に日本の花屋として認知された。

 司馬氏は「私たちの造花が好きな固定客がいます。日本で行っている生け花・アレンジスクールをやっていますが、それをこちらでもやろうという計画があります」と将来を語る。世紀城にはまだまだ入居していない様子の部屋も多い。入居ブームはこれからのようで、これからが花かず昆明店の本領発揮となるだろう。



山谷剛史
海外専門ITライター。守備範囲は中国・東南アジア・インド・北欧など。現在主に中国に滞在し、中国関連の記事を複数メディアで執筆。一般誌にも時々執筆するが、とはいえノンポリティカルな執筆が基本。統計数字だけではなく、できる限り誰にでも読めて分かり、匂いや雰囲気を感じることができる記事をつくるのがポリシー。そのために裕福な人々ではなく、国民の大部分である平民層以下にスポットを当て、現地で体を張って取材。

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