• 2007/08/16 掲載

経済的視点から見た3D仮想空間「セカンドライフ」の可能性(3/3)

デジタルハリウッド大学院三淵啓自教授にインタビュー

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オークションで取引されるリンデンドル
――7月13日から待望の「セカンドライフ」日本版がリリースされましたね。

三淵■
 はい、日本語で登録できるようになりました。ここ数ヶ月、登録者数が急に伸びていたのですが、日本版リリースをきっかけに拍車がかかった状況といえます。

――今日は、「セカンドライフ」について経済的な視点からお話いただけますか。

三淵■
 ユーザーがセカンドライフ内で通貨として使うリンデンドル(Linden$)についてと、企業のセカンドライフ参入について、大きくこの2つのトピックに分かれると思います。
 リンデンドル(Linden$)は、よく仮想通貨といわれるのですが。仮想というより架空に近い貨幣ですね。どういうことかというと、パチンコの玉、ゲームで使うお金と同じものだと考えてください。リンデンラボ社は、リンデンドル(Linden$)に対し、保証や買取りを行っていません。リンデンドル(Linden$)がたくさん貯まっても、ある日、二束三文になる可能性があります。リアル社会でまったく貨幣価値はありません。

――実際の貨幣への交換が話題になっていますが…

三淵■
 確かに今、RMT(real money trade)でドルに変換できることが注目されていますが、仕組みはオークションと同じです。オークション市場の運営をリンデンラボ社が行っており、その取引を推奨しています。買い手と売り手がいるから値段がつき、供給され成り立っているのですね。もちろん、リンデンドル(Linden$)を資産に計上することはできません。
 リンデンラボ社は、「セカンドライフ内で活動するための権利を売っているだけ」と言っています。リンデンラボ社は、最高50ドル以上は保障しない方針であることも覚えておかなければなりません。
来年末には、仮想通貨総取引量が1兆2000億円に達するという試算も
――そうなのですか。今は1ドル当たりどれくらいで取引されているのですか。

三淵■
 1ドル当たり、270リンデンドル(Linden$)くらいで取引が成り立っています。とはいえ、経済の実験場としては面白いし、規模も大きくなっています。実際に、セカンドライフの中では、毎日、円に換算して2億円ほどが動いているといわれています。みずほコーポレート銀行の試算によると、来年末には仮想通貨の総取引量は1兆2000億円になるだろうと予測されています。

 現実の国家の経済規模と照らし合わせてみましょう。今年は、アフリカのシエラレオネ共和国なみですが、来年にはガーナ共和国を越すと言われています。今は、リンデンドル(Linden$)に価値はないといっても、どこかで担保を持たせれば、国家レベルの経済成長を遂げるという点が面白いですね。
 参入支援サービスなど、仮想世界の外での経済活動を含めるとさらに大きな経済規模になります。現状では、発展途上国の段階であるため、物価がとても安いです。そのため、大手企業が、採算性を取るには程遠いですね。

――では、セカンドライフ内で、かなり稼いでいる人はどれぐらいいるのですか。

三淵■
 ひと月で、2000ドル以上を稼ぐ個人は、数百人だと予想されます。870万人(※2007年8月10日現在)以上ものユーザーがいることを考えると、ほんの一握りですね。もちろん、小遣いや、プレミアム会員になって月に9ドルほどを稼いでいる人は、たくさんいますけど。

――どうやってお金を得るのでしょうか。

三淵■
 中で色々なものを作って販売する場合が多いですね。特に、アバターに関するものがよく売れる。中に入った人は、まず、やはり見た目にお金を使います。アバターの髪型、スキン(肌)が、よく売れています。スキンが最も高く、450-2000リンデンドル(Linden$)くらいです。服は無料で配られていたりして、敷居が低い。

――中でのビジネスでの成功例はありますか。

三淵■
 セカンドライフをインフラとして使うビジネスと中でのビジネスと分けて考える必要がありますが…。アメリカの例で、服飾学校の学生がセカンドライフ内でブランド構築して、それがリアルの世界で出店にまで至ったケースがあります。また、ゲームが任天堂DSにライセンス採用された事例もあります。個人でテストマーケティングできる点は大きいですね。

――今、登録者数はどのような経緯で伸びているのでしょうか。

三淵■
 現在、登録者は約870万人です。昨年の7月だと、50万人くらいでした。昨年の6月まですごく少なかった。2003年のセカンドライフサービス開始以降、クチコミなどで宣伝コストをかけずに広がっていきました。その後急速に登録者が増加した理由はいくつかあります。

 まず、2006年3月ごろに雑誌『Newsweek』に取り上げられ、話題になりました。ICチェーン社が600万円売り上げた話が掲載され、セカンドライフ内でもうけられると注目を集めました。また、昨年夏にロイターが参入し、日本のメディア、広告代理店も動き出しました。

 もうひとつのきっかけは、リンデンラボ社が昨年6月から、クレジットカードなしでも無料会員として登録できるようにしたことです。これにより、裾野が広がりましたが、架空の登録者も増えました。それまでは、クレジットカードで身元が割れていた内輪の集まりという要素が強かったんです。

――日本のユーザーはどれくらいいるのですか?
三淵■
正確な数は分かりませんが、今年3月の時点で17万人、現在30万人と推測されています。現在はまだデジタルリテラシーの高いアーリーアダプターが多数いる段階だと思っています。

    

●三淵啓自(みつぶち・けいじ)
1961年生まれ。スタンフォード大学コンピューター数学科にて修士号取得後、米国オムロン社サンタクララ研究所にて人口知能や画像認識の研究に携わる。その後、米国ベンチャー会社設立を経て(株)日本 ウェブコンセプツ、米国法人3U.com 社を設立。2004年からデジタルハリウッド大学大学院の大学院専任教授に就任。2005年7月デジタルハリウッド大学院「メディアサイエンス研究所」NCG研究室長に就任し文部科学省の調整費プロジェクトに従事、2006年10月、セカンドライフ研究室を設立。室長に就任。 主な著書:『セカンドライフの歩き方 バーチャルガイドブック』(ASCII出版)

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