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  • 2007/11/06 掲載

代表的な管理会計の手法について(2/2)

【連載】経営力を高める管理会計とは(第2回)

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「ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法」とは

 現金の流入時期(貨幣の時間価値)を考慮し、伝統的な投資の意思決定方法の問題点を改善した評価方法がディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法である。

 投資の意思決定の基準として必要な性質を整理すると次のようになる。
(1)収益性が評価できること
(2)貨幣の時間価値を反映していること

 先のA案、B案についてDCF法を使って評価してみよう。この場合の前提として、割引率を5%、設備の稼動期間(「経済的貢献年数」ともいう)を6年とし、初期投資額の他に現金流出額はないものとする。

 ところでDCF法には次のように大きく2つの方法がある。
(1)正味現在価値(NPV)法(net present value method)
(2)内部利益率(IRR)法(internal rate-of-return method)

DCF法の正味現在価値(NPV)法とは

 正味現在価値(NPV)法の計算式は次の通りである。

管理会計
数式1 正味現在価値(NPV)の計算式


管理会計
の値は現価係数と呼ばれ、現金流入額にこれを掛けることにより、その現在価値が求められる。実務的には「現価係数表」を参照し、該当する割引率と年数からこの値を求めている。

 割引率5%での現価係数およびA案、B案それぞれの現在価値は以下の通りである。

表4 割引率5%での現価係数およびA案、B案それぞれの現在価値
投資額(初年度期首)1年目2年目3年目4年目5年目6年目
現価係数割引率5%の場合
0.952
0.907
0.864
0.823
0.784
0.746
-
A案
500
20
30
50
100
200
300
700
現在価値
19.04
27.21
43.20
82.30
156.80
223.80
552.35
B案
400
100
100
100
100
50
50
500
現在価値
95.20
90.70
86.40
82.30
39.20
37.30
431.10


 これによりA案のNPVは(552.35-500=52.35)であり、B案のNPVは(431.10-400=31.1)となる。よって、NPVの絶対額で評価するならばA案の採用となる。また、投資金額の規模を考慮した「現在価値指数」においてもA案は(552.35÷500=110.47%)でB案の(431.10÷400=107.78%)を上回っている。

 毎年の正味現金流入額が等しい場合には、毎年の現在価値をいちいち計算する必要はなく

  NPV=(毎年のキャッシュフロー)×(「年金現価係数」)-(投資額)

で求めることができる。この年金現価係数も実務的には「年金現価係数表」を参照し、該当する割引率と年数から求めている。DCF法においても回収期間を評価することがあり、これを「割引回収期間」といっている。

DCF法の内部利益率(IRR)法とは

 次に内部利益率(IRR)法について説明しよう。これは投資額と正味現金流入額の現在価値合計とを等しくする割引率(=内部利益率)を求める手法のことである。


管理会計
数式2 内部利益率(IRR)法の計算式


 すなわち、上記の算式を成立させる「r」の値を求めるのである。年数「n」は分かっているはずであるから、「現価係数表」あるいは「年金現価係数表」から試行錯誤的に探し当てることになる。毎年の正味現金流入額が等しければ年金現価係数表が利用可能となり簡便に「r」を求められる。

 内部利益率は、その金利で借入を行うならばその設備投資によって毎年入ってくる正味現金流入額で、その借入の元本部分と支払利息分とを、想定される経済的貢献年数で丁度返済できる、ということを意味している。したがって、内部利益率が高いほど返済余裕がある、ということでありその投資案件は有望ということになる。

 以上、意思決定会計の代表的な手法である「差額原価収益分析」特に投資の意思決定会計に使われるDCF法を中心に解説してきた。

 次回は「業績評価会計」の手法について解説したい。


長谷川 孝至
エス・エス・ジェイ取締役執行役員総合企画室長
大手外資系監査法人入社後、独立し長谷川公認会計士事務所開設。その後大手ベンチャーキャピタルにてベンチャー企業への投資、経営指導、情報システムを中心とした経営管理システム構築指導を行う。また、東証一部上場企業にてシステムソリューションビジネス、経営企画部門の執行役員を歴任後、2007年2月より現職。公認会計士、システム監査技術者。

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