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- 2025/06/12 掲載
JA守る族議員 vs 小泉改革派どちらが正しい?研究が示す…農家の収入を下げる結末
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
票数獲得のためだけ?自民・森山幹事長の“自在に変わる態度”
2025年6月7日、盛岡市での講演で、自民党の森山裕幹事長は、生産性向上に向けた田んぼの大区画化、農業のIT化、そして輸出対応のための予算として、自民党内で2兆5,000億円規模の対策で合意し、総理や農林水産大臣に申し入れたと述べた。一見すると、前向きな農業政策への取り組みのように聞こえる。しかし、この発言には看過できない問題点が潜んでいる。
森山氏は、消費税減税に対しては財源の裏付けがないことを理由に一貫して慎重な姿勢を示し、いわゆる「103万円の壁」の見直しや、ガソリン暫定税率の廃止といった国民負担の軽減策にも消極的であった。そのような人物が、自らの影響力がおよぶ農業分野、言い換えれば自身の票田ともなり得る領域に対しては、巨額の予算を投入することに積極的な姿勢を見せる。
この二重基準とも取れる態度は、国民全体の利益よりも特定の業界や支持層への利益配分を優先しているのではないかという疑念を抱かせる。財政規律を声高に叫ぶ一方で、特定の分野には手厚く資金を配分する姿は、多くの国民にとって到底受け入れられるものではないだろう。
ある発言に表れる…日本の農業の可能性を狭めてきた発想
森山氏は同講演で、米価高騰について「コメの流通のあり方について検証しなければなりません」と述べつつ、「主食であるコメを外国に頼ってはいけないと思います。何としても国産で、国民の皆さんに安心していただける農業政策を打ち立てていくことが本当に大事だと思っております」と強調した。この発言は、一見すると国民の食料安全保障を憂慮する責任ある政治家の言葉のように聞こえるかもしれない。
しかし、一方で、自民党は農産物の輸出を積極的に推進しようとしている現実がある。貿易は相互主義が原則であり、日本だけが一方的に輸出を拡大し、輸入は一切行わないなどということは国際社会において通用しない。
森山氏のような農水族のドンが、この基本的な国際経済の原則を理解していないわけがない。そうであるならば、「コメだけは外国に頼らない」という言葉は、国内の農業保護を求める層に向けた一種の「ガス抜き」であり、本質的な国際競争力強化や構造改革から目を逸らさせるためのレトリックである可能性を否定できない。
このような内向きで保護主義的な発想こそが、日本の農業の可能性を狭め、結果として国際市場での競争力を削いできたのではないだろうか。
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