- 2026/05/19 掲載
寿司チェーンがなぜ“本気コメ作り”?元気寿司・スシロー・はま寿司…コメ争奪戦の今
愛媛県生まれ。京都大学文学部卒。中国・北京大学修士課程(歴史学)修了。時事通信社を経てフリーに。新刊に『ウンコノミクス』(インターナショナル新書、2025年4月)、『日本一の農業県はどこか―農業の通信簿―』(新潮新書、2024年1月)、共著に『人口減少時代の農業と食』(ちくま新書、2023年)、『誰が農業を殺すのか』(新潮新書、2022年)など。日本の食と農に潜む課題をえぐり出したとして、食生活ジャーナリスト大賞ジャーナリズム部門(2023年度)受賞。雑誌や広告など企画編集やコンサルティングなどを手掛けるウロ代表取締役
コメも魚も高過ぎる…寿司チェーンの苦境
川下(消費)から川上(生産)へ──。その象徴的な事例が、魚べいや元気寿司を運営するGenki Global Dining Concepts(ゲンキGDC、東京都台東区)による農業参入だ。同社は2026年4月、栃木県宇都宮市に清原Genkiファームを設立。コメの生産に乗り出した。背景にあるのは、コメ価格の急騰による経営の圧迫である。
2024年の「令和のコメ騒動」以降、米価は高止まりしている。猛暑による不作や、農家の高齢化による生産基盤の弱体化が重なった。
調達リスクの拡大は、コメに限らない。サーモンをはじめとする魚介類も、地球温暖化の影響もあって、漁獲量が減ったり不安定になったりしていて、その価格には波がある。
同社の2025年4~12月期連結決算は、純利益が前年同期比で7%減となった。コメや魚といった主要食材の高騰と、人件費の増加が大きく影響した。
こうした状況を踏まえ、同社は仕入れに左右される構造からの転換を決断する。サーモンやマダイなどの養殖事業に参入するとともに、コメの生産にも乗り出したのだ。
何が外食大手をコメ作りに駆り立てるのか
注目すべきは、ゲンキGDCがコメ卸最大手・神明の属する神明ホールディングスのグループの一員である点だ。清原Genkiファームを担当しているゲンキGDCの山村佳史氏は言う。「親会社は、川上事業に入り込んでいく方針を強く持っています。弊社ははじめに魚の養殖事業に参入し、続いてコメの生産にも参入しました。米価高騰もあって利益が減ったこともあり、安定調達をしたいという思いがありました」
山村氏のゲンキGDCでの肩書は、農林水産部長。「飲食業で『農林水産部』がある企業はまず無いと思っています」と語るように、生産を重視する戦略が組織体制にも表れている。
神明ホールディングスは、JAも含めたコメの流通に強い。だからこそ、生産への関与を強める必要を切実に感じているという。コメの安定調達は、特定の企業の問題ではなく、産業構造そのものの課題になりつつあるからだ。設立した清原Genkiファームの水田は、30ヘクタールある。
「現在のコメの生産能力は約150トン。栃木県内の店舗で年間約500トンを使うので、近い将来、その全量を賄えるようになりたい」(山村氏)
完全な自給を急ぐのではなく、段階的に生産比率を高めていく戦略だ。グループ全体のコメの年間使用量は、約5000トンに上る。清原Genkiファームで生産と消費を結ぶモデルを確立し、他県で水平展開することを視野に入れる。
コメの調達に苦労しているのは、国内の店舗に限らない。生産量が確保できるようになれば、海外も含めたグループの店舗への供給も考えられる。 【次ページ】【広がる農地・減る担い手】既存農家とタッグを組むメリット
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