- 2008/08/27 掲載
所有型からクラウドへの移行はIT市場の成長要因にならず、米ガートナー世界のIT支出動向を発表
世界経済が減速の懸念にある中、ガートナーではこの一因を米ドル安が背景と分析しているものの、「IT支出の後退へとつながる兆候は見られない(ガートナー バイス プレジデント兼最上級アナリスト ジム・タリー氏)」として、為替変動の影響を除いた場合の実質成長率が約4.5%になると試算している。さらにタリー氏は「今後数年間、成長率は低くなるが、依然として根本的な部分は堅調さを保ち、新興市場や旧システムの入れ替え、IT環境のシフトなどが成長を牽引する役割を果たす」と分析している。
さらにガートナーでは、2008年の全世界のソフトウェア支出の成長率についても発表。こちらも前年比10%超と堅調なペースで推移しており(表1)。「企業は自社所有型のハードウェア/ソフトウェア資産から、従量型のサービス・ベース・モデルへと切り替え」つつあり、ITサービスへの支出の成長率は9.5%超で、僅差で2位となった。
2007年 | 2008年 | 2009年 | |
コンピューティング・ハードウェア | 382 | 408 | 423 |
年間成長率 (%) | 10 | 7 | 4 |
ソフトウェア | 178 | 196 | 211 |
年間成長率 (%) | 13 | 10 | 8 |
ITサービス | 748 | 819 | 872 |
年間成長率 (%) | 10 | 10 | 7 |
通信(機器およびサービス) | 1,843 | 1,983 | 2,093 |
年間成長率 (%) | 10 | 8 | 6 |
合計 | 3,151 | 3,406 | 3,600 |
年間成長率 (%) | 11 | 8 | 6 |
出典:ガートナー (2008年7月) |
さらにタリー氏は、所有型から従量型(クラウド・コンピューティング)への「全体的な市場成長率への影響はプラスとマイナスのどちらにも作用しない」と主張しながらも、「ただしガートナーでは高い成長の要因となるプラスの潜在的な可能性が存在する」ことを認めているという。
その一方で、マネージング・バイス プレジデント ジョアン・コーレイア氏は「SaaS (Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)、クラウド・コンピューティング、SOA (サービス指向アーキテクチャ)、Web2.0、オープンソース・ソフトウェアなどの登場によって、ソフトウェア市場は大きく変貌」し、「社内の資産を利用するこれまでの環境から従量型のサービスの利用へと切り替える中でこれらの要素が市場の成長率を左右」すると指摘している。
その結果、「IT支出の大部分を占めるのは製品ではなくサービス(コーレイア氏)」で、「通信サービス市場自体の規模が非常に大きいことから、今後5年間を見た場合でも、依然としてIT市場の44%という大きな部分を占める(主席リサーチ・アナリスト、ウィリアム・ハーン氏)」ことになり、2008年には2兆ドルに迫るという。
--米国外の成長とドル安、モバイルへの移行が牽引
また、ハードウェア総支出の60%を占め、ハードウェア分野の成長の中核を担っているのがパソコンだ。ガートナーによると、予想を超える成長率で推移しており、今のところ動きが鈍る気配がないという。米国の予測は微増である一方、特にアジア太平洋および西欧では大幅に増加している。タリー氏によれば「米国以外の地域における市場成長とドル安」が原因。また、地域的な変化に加え、市場では製品単価が高いモバイルPCへの切り替えが急速に進んでおり、ユニット当たりの収益も高いため、市場全体の実績を押し上げているのだという。
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